過重なノルマや厳しい叱責でうつ病発症
諌早労基署長(自動車販売会社)自殺未遂事件
(長崎地裁平成22年10月26日判決)
<事件の概要>
自動車販売を業とする会社に勤務していた原告は、新任の部長から、「中途半端な人間、凝り固まった化石」などと言われ、事あるごとに厳しく叱責された。
原告は役職定年前に異例の外販担当に配置換えになり、部長から他の従業員よりも高いノルマが設定され、一部ノルマを達成できなかったことから、原告はノルマ達成のために休日出勤や毎月80時間を超えるような時間外労働に従事した。
部長は、会議等の場で、「売上げが上がらない役に立たない者は辞めていい」などと述べ、原告に対しては「あんた給料高いだろ、給料の5倍くらい働かなければ合わない」などと叱責した。
また、原告のノルマ達成率が60%に達しなかったことから、原告は部長から他の従業員の前で無能呼ばわりされたりした。
原告は、役職定年後販売店に異動し、これを左遷と捉えてショックを受け、異動直後自殺を図って、その後うつ病の診断を受けて退職した。
原告は、部長から達成困難なノルマを課せられ厳しく叱責されて長時間労働を強いられたこと、部長と原告の関係はパワハラと評価できること等を主張し、原告のうつ病発症は業務に起因するとして、労基署長に対し休業補償給付を・請求したが、不支給処分を受けたため、その取消しを求めた。
<判決要旨>
ノルマは前年度の177.2%と極めて高く設定されていること、原告はノルマ達成には至らなかったものの、前年実績との対比で見ると、外販担当5人中1位と認められるから、原告の仕事の能率が低下していたと認めることはできない。
部長の着任後、原告の外販担当への異動までの約8か月間、原告は部長から長時間にわたる叱責を受けることがあり、人格をとがめるような発言が認められ、この間部長の説教や叱責が原告に与えた判断指針における心理的負荷の強度は「V」に修正されるべきである。
精神障害に寄与したであろう複数の出来事が重なって認められる場合のストレスの強度は総合的に評価すべきであるところ、外販異動前の部長による指導の範囲を超えた厳しい叱責、外販異動後の厳しいノルマの設定及びそのノルマの不達成など、原告のうつ病発症時期前の出来事に限っても、判断指針によれば、その心理的負荷の強度の総合評価は「強」とされるべきであり、平均的な労働者に精神障害を発症させるおそれのある程度の強度の心理的負荷があったということができる。
他方、原告には、業務外の出来事による心理的負荷が窺われないこと、個体例の要因が諦められないことからすると、業務と原告のうつ病発症及び増悪との間には相当因果関係が諦められるから、本件各処分は違法である。
転職サイトを使いこなす!
スポンサードリンク
|
|