接触事故を理由にバス運転士が炎天下で除草作業
神奈川(バス会社大和営業所)制裁事件
(横浜地裁平成11年9月21日判決)
<事件の概要>
バス事業を営む被告会社に運転士として勤務する原告は、路線バスを運行中に接触事故を起したために、営業所長(被告)から営業所内の除草作業を命じられ(第1業務命令)、8月に14日間これに従事した。
被告はさらに4日間、原告に対し研修を行い、その中で服務規程の読習、書き写しをさせた上、添乗指導を受けることを命じた(第2業務命令)。
原告は翌月、独車試験に合格し通常業務に復帰した。
原告は、本件接触事故については自分に責任がないにもかかわらず、十分な調査をせずに原告の責任と決めつけ、第1業務命令を発したこと、勤続5年以上の運転士である原告に対する第2業務命令は、見せしめ、嫌がらせであることを主張して、被告らに対し慰謝料200万円を請求した。
<判決要旨>
原告には交通法規達反がないことを考慮すれば、本件事故における過失はないと認められるが、原告が本件事故の音ないし振動に気づかなかったことについては、バス運転士としての注意散溝があったと認められる。
被告が第1業務命令を行ちた際、十分に本件事故の状況を把握して判断したということはできないから、岡命令は早きに失したと言わざるを得ない。
運転士を乗務から外すこと自体は、運行管理者たる所長の裁量によってなしうるから、下車勤務の命令自体は、服務規程に直接記載がないことをもって違法ということはできない。
また、本営業所には相当程度の面積にわたり雑草が生えているものの、除草作業の専従作業員はいないから、下車勤務の除草作業は必ずしも認められないものではない。
そして、原告の不注意により本件事故の発生を認識しなかったので、被告が原告に下車勤務を命じたこと自体には違法の点はない。
ただ、第1業務命令についてみれば、被告は原告に射し除草作業のみを命じ、しかも原告が作業を終了するまで期限や作業範囲を指定したことはない。
さらに被告は、本件事故において原告に全く過失がないにもかかわらず、原告の有過失を前提として右業務命令を発しているのであり、そうであれば、除草作業自体が下車勤務の−形態として認められるとしても、被告の一存で、最も苛酷な作業である炎天下における横内除草作業のみを選択し、原告が病気になっても仕方がないとの認識のもと、同作葉に従事させることは原告に対する人権侵害の程度が非常に大きく、下車勤務の目的を大きく逸脱しているのであって、むしろ悪意的な懲罰の色彩が強く、安全運転をさせるための手段としては不適当であり、所長の裁量によりなしうる範囲内ではありえない。
したがって、第1業務命令は、就業規則の趣旨に反するのみならず、被告の所長としての裁量の範囲を逸脱した遵法な業務命令で、不法行為が認められ、慰謝料は60万円が相当である。
第2業務命令は、運転技術の矯正を目的としており、熟練の班長に個別に欠点を指摘させる方法を取っており、適法妥当なものである。
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