安全点検作業に抵抗して炎天下作業
JR西日本吹田工場(踏切確認作業)事件
(第1審 大阪地裁平成13年12月28日判決)
(控訴審 大阪高裁平成15年3月27日判決)
<事件の概要>
従前、被告会社吹田工場では安全意識に問題があると指摘されたことから、同工場の各職場で安全点検したところ、踏切通行において安全確認が励行されていない事象が5件報告されたほか、立て続けに労災事故が月間3件ずつ発生していた。
こうした中、被告会社の職員で国労組合員である原告甲及び同乙は、警報機の稼働中に踏切を渡ったところ、安全衛生を所管する総務科長(被告)に、「渡るな、危ないやろう」、「アホかお前らは」などと制止され、これを無視して横断したところ、原告甲は被告に腕を掴んで強引に引っ張られ、これを振りほどこうとして手首に擦過傷を負った。
被告は注意の仕方に好ましくない点があったとして支社長から注意を受け、原告甲に対して謝罪したが、その後原告らは、それぞれ数日間、8月の炎天下での作業(本件作業)に従事させられた。
原告甲は本件作業の強要と手首の負傷、原告乙は本件作業の強要を理由として、それぞれ被告らに対し165万円、110万円の損害賠償を請求した。
<第1審判決要旨>
本件作業は、真夏の炎天下で、日除けのない約1メートル四方の白線枠内で、終日踏切横断者の指差確認状況を監視、注意するものであって、著しく過酷なもので、労働者の健康に対する配慮を欠いたものといわざるを得ない。
また本件作業が、従前行われていた定点監視作業とは、監視時間等の点で内容を異にするものであること、原告らの本件作業の実施実績は支社に報告されていないことなどを併せ考慮すれば、原告らの本件作業は、使用者の裁量権を逸脱する違法なものであったといわぎるを損ない。
被告の行為は、上司に対する原告甲の態度を質すためのものであるが、嫌がる同原告の腕を3回も引っ張って事務所に連れて行こうとする行為は正当な業務指示とはいえない。
被告による本件暴行は、原告甲の「あんた」という発言に怒ったことから発したものであること、本件傷害は比較的軽いこと、被告は原告甲に謝罪していることなどを総合考慮すれば、本件暴行による慰謝料としては5万円が相当である。
また、本件作業内容が過酷であること、本件作業に従事した期間を総合考慮すれば、慰謝料等は15万円が相当であり、原告乙についても、本件作業の内容に加え、原告甲よりも1日多く従事していることなどを総合考慮し、慰謝料等20万円が相当である。
本件は、原告、被告双方から控訴したが、原審と同旨によりいずれも棄却された。
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