独断の資料提供等で雇止め
美術刀剣関係法人事務局長等雇止め事件
(第1審 東京地裁平成20年5月20日判決)
(控訴審 東京高裁平成21年5月19日判決)
<事件の概要>
原告Aは、被告財団法人の事務局長、原告Bは同会計課長、原告Cは同管理課長兼庶務課長を務めてきた者である。
平成13年10月、被告は文化庁より刀剣等の審査について改善指導を受け、同17年11月にも同様の指導を受けたところ、同18年5月頃、文化庁に対し、被告の刀剣審査に携わる者と刀剣商との癒着の通報があり、被告は文化庁から本件指導を受けた。
被告は文化庁に対し審査は公平に行っている旨回答したが、原告Aは本件指導に反する申請をしている理事がいることなどを記載した文書を独断で文化庁に提出した。
同年8月、原告A及び同Cは理事会の開催に反対したが、事務局が関知しない形で理事会が招集され、同理事会後、新理事長は原告Aに対し、文化庁に対し被告の文書を勝手に提出したとして、70歳に達していることを理由に定年退職させること、また原告B及び同Cに対しては、理事会に非協力的であったこと、勝手に国債を買い換えたり、就業規則で許された枠を超えて工事を発注したことなどを理由として、雇止めすることを通告した。
これに対し原告らは、継続雇用に合理的な期待権があることを主張し、一方的な雇止めは無効であるとして、職員としての地位の確認と貸金の支払いを請求した。
<第1審判決要旨>
原告Aの前任及び前々任の事務局長がいずれも78歳で退職していること等からすれば、事務局長の定年制の適用は厳格にされていなかったと認められ、原告Aの雇用契約には雇止めの法理の適用はないというべきであって、この程度の事由で解雇することは相当性を欠き、解雇は無効である。
原告B及び同C(両原告)は、公務員退職後に嘱託として採用されたもので、雇用契約の更新を重ねて6年以上雇用を継続してきたところ、両原告は年金受給可能年齢に達していたから、若年労働者ほど雇用継続の必要性も強いとはいえず、解雇に関する法理を類推すべきとはならないものの、期間の経過により当然に雇用契約が終了するとは解し難い。
理事会の開催に当たり、原告らが積極的に開催を妨害した事実は認められないし、理事会当日に両原告が専務理事等の指示に従わなかったことは不適切ともいい得るが、無理からぬものがあったといえる。
また、国債の買換え、工事支出等の点については原告らの責任のみ問うことは適切でない。
両原告はフルタイムで勤務してきたこと、更新を重ねて勤務期間は約6年に及んでいること、契約更新手続きは形式的に近いことを考えると雇用継続の期待は強く、本件雇止めは慈恵的といえるから、両原告の雇用契約は終了していないというべきである。
本件は被告が控訴したが、棄却された。
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