セクハラ行為の苦情相談阻止のため恫喝
埼玉県(市役所)苦情相談阻止等事件
(さいたま地裁平成17年11月25日判決)
<事件の概要>
市役所に勤務する女性(原告)は、次長(被告甲)と出張した際、車内で身体を触られるなどして抗議し、その直後課長(被告乙)から担当を外れるよう命じられた。
翌年、被告甲のセクハラ行為について総務部長は匿名の手紙を受けて事情聴取したが、被告甲はこれを否定したほか、被告乙は原告に対し、セクハラで騒ぐと今後仕事上不利益を受けることになるなどと告げた。
一方、原告から相談を受けた組合書記長がセクハラ相談員に相談したところ、被告乙は原告に対し、苦情処理委員会が開かれたら大変なことになると言って取下げを求め、被告甲はセクハラがなかったことにするよう原告に要求した。
原告はその8か月後、簡易裁判所に対し、市、市長、被告らを相手方として調停を申立て、セクハラ行為やもみ消しについて謝罪を求めたが、その半年後これを取り下げた。
また、原告は苦情処理委員会に苦情相談をしたところ、本訴原告らは、原告から公然と不法行為の疑いがかけられているとして、原告の損害賠償請求権及び謝罪請求権の不存在の確認を求めて提訴した(本訴)。
一方原告は、被告らに対し、300万円の損害賠償を請求した(反訴)。
<判決要旨>
原告のセクハラに関する供述は具体的かつ詳細で説得力に富んでいる一方、被告甲は車内で握手したに止まると供述するが、公務出張中の2人だけの車内において、配偶者のある相当年齢の離れた女性で、所属の末席の部下の原告に対し握手をすることはおよそ理解し難く、その供述には納得し難い点が多く見られるほか、本件苦情処理のもみ消しエ作に及んでおり、信用性に乏しい。
被告甲は原告に対し、3回にわたり、いずれも車内において手を握るなどした事実が認められ、これら各行為は、いずれも権力関係を背景に、原告が容易には抵抗できない状況下で行われており、セクシュアル・ハラスメントであって、原告の人格権を侵害する不法行為に該当する。
また、被告乙の各行為は、いずれも職場における権力関係を背景にして又は将来の職務上何らかの不利益を与えるかのように告げて原告の意思を抑圧し、原告が受けたセクシュアル・ハラスメントを解決する機会を奪い、その精神的苦痛を加重させたのであるから、原告の人格権を侵害する共同不法行為に当たる。
本件不法行為が執拗に反復してなされたこと、男女共同参画社会の実現に当たり範となるべき幹部公務員が行った行為であること等を考慮すれば、損害賠償は、被告甲については120万円、被告乙については60万円が相当である。
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