金銭携帯チェックのための所持品検査
福岡(鉄道会社自動車営業所)所持品検査事件
(仮処分第1幸福岡地裁小倉支部昭和52年5月12日判決)
(同控訴審 福岡高裁昭和56年3月25日判決)
(本訴 福岡地裁小倉支部昭和56年9月14日判決)
<事件の概要>
旅客運送事業を営む被告(被申請人)は、乗車賃の不正領得等の不正行為が跡を絶たなかったため、勤務中金銭を携帯したときの「私金の証明」を厳格にしたが、その後も乗務員が金銭を保持している事件が相次いだ。
被告は各乗務員等に対し、所持品検査の確認書への押印を求めたが、原告(申請人)は、個人の人権が侵害されるとしてこれを拒否したため、被告はこの拒否行為が就業規則に違反するとして、出勤停止処分とした後、原告を諭旨解雇とした。
被告は、その他にも、原告が、@確認書の説明の際の退去命令に従わなかったこと、A出勤停止処分中にゼッケンを着けてビラを配布したこと、H出勤停止処分が不当と抗議したこと、C宿泊所に下着だけで寝ていたこと、Dデモ隊の先頭に立って確認書粉砕を叫びながらデモを繰り返し、バスの出庫を遅らせたことを挙げ、処分の正当性を主張した。
これに対し原告は、出勤停止処分及び諭旨解雇処分は無効であるとして、雇用関係の確認と貸金の支払いを求めた。
<仮処分第1審判決>
会社が本件確認書に押印を求める真意は、単に説明をうけた確認にとどまらず、その内容につき押印者の同意と誓約を求めるものと解する余地が十分にあり、そうであれば、処分を受けるおそれのある事項につき同意を強要し、或は誓約を強制することは許されないことは当然であり、業務命令としてもなし得ない0会社が主張する申請人の他の非違行為については、いずれも本件処分の理由とするほど重大な違法行為とは認められない。
会社施設内の本人の占有する自家用車への所持品検査が許されるとしても、一方乗務員等においても故なく私物につき検査を受けない自由が認められるペきであるから、検査は合理的理由がある場合に相当な方法と程度においてされる限度で許されるというペきである。
したがって、確辞書に関する被告の従業員に対する説明は妥当性を欠き、さらに乗務員等が勤務中私金の証明のつかない金銭を所持していた場合には公金を不正領得した場合と同様懲戒解雇処分を課すという就業規則の規定は、それが厳格に解釈・適用されるとすれば不合理といわなければならない。
原告が本件確認書に関して抱いた疑問には−応首肯できるものがあり、原告は押印できない理由をその都度述べていること等を考え合わせると、就業規則「上長の職務上の指示に従わず、その情状が重いとき」には該当しないと思われる。
被告の主張する原告のその他の非違行為は、懲戒事由には言妾当するが、輸旨解雇に億するほどの規律違反ということはできない。
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