セクハラと罵倒により精神的疾患で退職
福岡(薬局)パートタイマー退職事件
(第1審 福岡地裁平成17年3月31日判決)
(控訴審 福岡高裁平成19年3月23日判決)
<事件の概要>
薬局を経営する被告会社に雇用される女性パートタイマー(原告)は、入社以来、社長(被告)から、キスをされたり、身体を触られたり、ホテルに誘われたりしたほか、「代わりはいくらでもいる」などとも言われた。
原告は入社約半年後、被告の言動を同僚に話したところ、被告の妻から「あんたのせいで家族の人生を台無しにされた」、「あんたも楽しんだのだろう」、「うちの人がいやらしいことをしたのは想像がつくけど、あんたは黙っているべきだった」などと激しく罵倒された上退職を迫られ、その直後に退職した。
原告は、被告のセクハラ行為及び妻の脅迫的言辞による退職によりPTSDに罹患し、長期の療養を余儀なくされたとして、2年分の休業補償相当額及び慰謝料200万円を、被告及び被告会社に請求した。
<第1審判決要旨>
被告の行為は、原告の抵抗も省みず性的な関係を迫るもので、セクハラ行為以外の何物でもない。
また被告の各発言は、通常部下女性と交わす会話の範囲を著しく超える露骨な性的表現あるいは雇い主の立場を利用した強要的な言辞というべきものであって、社会通念上許容される限度を著しく逸脱し、違法性を有する。
原告は理不尽な言い分で解雇され、被告の妻から一方的に罵倒されるのみならず、人格まで否定するような発言をされたこと、そのために精神的なバランスを崩し重大な事態に陥ったことが窺われる。
被告は従業員の安全配慮義務に違反し、不法行為者として、原告の損害につき賠償責任を負い、慰謝料は500万円、弁護士費用は60万円が相当である。
被控訴人(第1審原告)のノートには、控訴人(第1審被告)の性的言動やこれに対する不快感などを示す文章で占められているが、身内を除くと控訴人のことばかり記載されており、当時就職に直面していたこと、両親の離婚、友達への悩みの相談などの記載がほとんどないこと、解雇直前で記述が終わっていること等日記としては異例の形式であることから、本件ノートによりセクハラ行為の推認はできない。
PTSDを発症するほどのセクハラ行為を受けていたはずの被控訴人が、時給700円で1日4時間勤務のパートタイマーを辞めなかったのは不可思議であること、被控訴人自身、控訴人に射し、コスプレ店に行ったこと、スナックで働いていた顧客に胸を触られたこと、女友達とラブホテルに見学に行ったことなどを話しているところ、セクハラにこ苦しんでいた人物が加害者に対してこのような発言をすることは考え難いことからすると、セクハラ行為の存在を推認することは困難である。
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