誹謗中傷メールを理由に処分と退職
経済情報誌会社誹謗中傷等メール事件
(東京地裁平成14年2月26日判決)
<事件の概要>
原告は、平成10年から、経済情報の販売等を業とする被告会社の営業第一部に勤務している者であり、被告Aは同社の管理部長、同Bは経営企画グループ長、同Cは社内システム委員会委員、同Dは取締役営業第一部長の地位にあった者である。
平成11年12月、被告会社の従業員Tからシステム委員会委員に対し、N新聞管理部長の名で誹誘中傷メールが複数回送られたとの苦情があった。
これを受けて被告A、同Bらが調査した結果、原告が発信者である可能性が高いと判断し、被告A、同B及び同Dにより原告から事情聴取を行った(第1回事情聴取)。
しかし、原告は誹音中傷メールの発信を否定し、誹誇中傷メールに関する有力な資料は見つからなかった。
一方、原告は勤務時間中に私用メールを送受信していたところ、被告会社は平成13年1月13日、誹誇中傷メール及び私用メールについて事情聴取をした(第2回事情聴取)が、原告は誹誘中傷メールとの関わりを否定し、翌14日、退職日を3月1日とする退職願を提出し受理された。
被告会社は原告に対し、私用メールについて譴責処分とし、さらに同年1月20日、原告に対し、同月31日で退職するよう申し入れた。
原告は退職日は3月1日であると抗議したところ、被告A及び同Dは原告に対し3月1日の退職は認めるが今後は出社しないようにと告げ、原告が検討したいというと被告Aは「無礼だ」などと怒鳴りつけ、結局原告は同年3月1日で退職した。
原告は、第1回事情聴取において、被告Aらは原告が誹誘中傷メールの犯人と決めつけて人格権を侵害したこと(不法行為@)、被告Aらは原告所有の私的データを勝手に奪って被告会社所有のファイルサーバーに保管し、返還を求めても応じないこと(不法行為A)、第2回事情聴取では、被告Aらは原告を誹謗中傷メールの犯人と決め付け、「男の風上にも置けない」などと罵って人格権を侵害したこと(不法行為B)、被告Aは原告に早期退職を迫り、「前歴照会が来てもいいことは言わないぞ」などと脅迫したこと(不法行為C)を挙げ、被告会社及び被告Aらに対し、慰謝料500万円、弁護士費用50万円を請求した。
<判決要旨>
(1)不法行為@について
本件は、誹誇中傷メールの送借という企業株序違反の調査を目的とし、かつ原告には誹韓中傷メールの送倍音であ葛と合理的に疑われる事情が存するから、原告から事情聴取をする必要性と合理性は強く認められる。
また質問の声が大きく、同じ質問が繰り返されたとしても、事情聴取の時間は30分程度であること、監督責任を追求されるペき被告Dが同席していること、事情聴取の趣旨督説明した上で開始していること、質問内容等も特に不適切なあのではなく、強制にわたるとまでは認め難いことからすると、第1回事情聴取は社会的に許容しうる限界を超えて原告の精神的自由を侵害した違法な行為とはいえない。
(2)不法行為Aについて
私用メールは、送倍音がその間職務専念義務に連反し、かつ私用で会社の施設を使用ずるという企業秩序違反行為を行うことになることはもちろん、受倍音の就労を阻害することにもなる。
また、本件では受信者から私用メールが返借されたものが相当数存在し、これは受信者にも職務専念義務に違反し、企業秩序違反行為を行わせるものである。
そして、原告の私用メールの量は無視できないものがあったから、新たにこれについて原告に閲し調査する必要が生じた。
被告会社が行った調査は、被告会社が所有し管理するファイルサーバー上のデータの調査であり、その調査が社会的許容しうる限度を超えて原告の精神的自由を侵害した違法な行為とはいえない。
原告に事前に告知しなかったことは、原告に誹誇中傷メールと私用メールという秩序違反行為を行ったと疑われる状況があり、事前の告知による調査への影響を考慮せざるを得ないことからすると、不当なこととはいえない。
私用メール等のデータを保存する行為については、処分事案に関する調査記銀は当該事案に関する紛争に備えて、あるいは同種事件への対応の参考資料として相当期間保管の必要があり、違法に入手したものでない以上、これを削除しないことが違法となることはない。
また被告会社はこれらを原告に返還する義務はない。
(3)不法行為Bについて
社内秩序違反事件の調査を目的とするもので、かつ原告は誹謗中傷メールの送信者と合理的に疑われる事情が存するにもかかわらず、第1回事情聴取では十分な聴取ができなかったのであるから、再度事実関係を確認する必要があり、私用メールについても、処分の前提として原告から事情聴取する必要性と合理性は強く諦められる。
また、質問の声が大きく、同じ質問が繰り返しなされたとしても、事情聴取の時間は1時間程度であり、被告Dが同席していること、質問内容等も特に不適切なものではないことからすると、第2回事情聴取が違法な行為であるとはいえない。
(4)不法行為Cについて
本件の経過からすると、被告会社が原告に対し不信感を持つことはやむを得ない面があり、退職が決まり特段の仕事がなくなったという前提の下に原告に射し出勤しないように求めることが必ずしも不当とは言い難い。
被告Aの発音には一部不適切な部分があるが、これは被告会社として大幅に譲歩したと認識し、双方が容易に雑歩しない交渉の中での発言であること、短時間であること、原告は冷軌こ対応していることを考慮すると、社会的に許容しうる限度を超えた違法な行為とはいえない。
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