長期休職後のテスト成績不振を理由に退職強要
航空会社客室乗務員退職強要事件
(第1審 大阪地裁平成11年10月18日判決)
(控訴審 大阪高裁平成13年3月14日判決)
<事件の概要>
18年間勤務した後、通勤災害により4年以上休職していた客室乗務員(原告)は、休職中に会社(被告)から出社を命じられ、知識テストの結果、上司らから連日のように「能力・適性がない」、「周りにとってお荷物」、「寄生虫」、「普通は辞表を出す」、「制服を脱げ」などと退職を強要された。
原告は復職し3回の復帰訓練を受けたが、いずれも不合格と判定されたため、被告は原告の復職8か月後に「労働能力の著しい低下」等を理由として原告に解雇通告をした。
これに対し原告は、被告は異例の復帰訓練をして「不合格」の結論を出して解雇したものであって、解雇権の濫用として無効であると主張するとともに、退職強要及び解雇通告による精神的苦痛について慰謝料等1100万円を請求した。
<第1審判決要旨>
客室乗務員の業務は、万が−の場合は人斜こ直結することからすると、業務能力を欠いたままで乗務させることはできない。
しかし使用者は、労働者が直ちに従前業務に復帰できない場合でも、比較的短期間に復帰が可能な場合には、休業又は休職に至る事情、使用者の規模、業種、労働者の配置等の実情から見て、短期間の復帰準備期間を提供したり、教育的措置をとるなどが情義則上求められるというべきで、このような手段をとらずに解雇することはできない。
復帰訓練の結果からすれば、原告を直ちに客室乗務員として乗務させることには消極的にならざるを得ない。
しかし、原告は休職中における航空機やその設備機器の変化への知識の取得をしなかったにすぎず、解雇事由に該当するような著しい労働能力の低下は認められないから、本件解雇は解雇権の濫用として無効である。
原告の上司は、4か月間に30数回も原告と「面談」を行い、その中には8時間にもわたるものがあり、大声で罵倒したり、机をたたいたりしたほか、家族にも原告の退職を要請した。
かかる被告の対応は、その頻度、各面談時間の長さ、言動から見て、社会通念上許容しうる範囲を超えており、不法行為となる。原告は結局退職していないこと、原告の煮え切らない態度等が面談者の言動を誘発したことなどを考慮すれば、慰謝料は50万円、弁護士費用は5万円が相当である。
本件は被告から控訴されたが、第1審と同様に解雇通告は無効とされたほか、慰謝料は80万円に引き上げられた。
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