セクハラ後解雇で職場復帰後に雑用に配転
静岡(鉄道工業)解雇事件
(静岡地裁沼津支部平成11年2月26日判決)
<事件の概要>
原告は被告会社熱海支店に配属されたところ、同支店の事務次長(被告B)は原告に「大人の付き合いをしよう」などと交際を申し込み、食事の後、車の中で原告を押し倒し、下着に手を入れるなどした。
その後も原告は被告Bから夜も付き合うよう再三言われたために退職を申し入れたが、被告Bに引き止められた。原告は被告Bのことで、副支店長(被告A)に相談をしたことから、夕食を共にするようになり、その間被告Aは職場で原告に抱きついたり、太股を触ったり、プレゼントをしたりした。
原告は支店長と一緒に下請回りをし、偶然同じ日に休暇を取ったことなどから、被告A及び同Bは原告と支店長が特別な関係にあるかのような噂を流した。
また、協力会社の女性従業員をもてなす際に希望する飲み物を尋ね、原告がこれを断ったところ、被告Bは「この人はジュースやお酒ではなく、男が欲しいんだ」などと言った。
支店長は、本社の指示を受けて、原告に対し、経費削減を理由に退職勧告をしたが、原告がこれに応じなかった上、セクハラ防止対策を求めるなどしたため、原告を解雇した。原告は地位保全仮処分を申し立てて認容され、職場復帰したが、掃除等の雑用のみを命じられ、昇給、賞与の支給はなかった。
原告は、被告らのセクハラ行為によって精神的苦痛を受け、違法な解雇をされたとして、被告会社に対し慰謝料700万円及び賞与133万円余を、被告A及び同Bに対し、各慰謝料300万円を請求した。
<判決要旨>
被告B及び岡Aの行為は、職場での上下関係を利用して、原告の意思を無視して性的嫌がらせを繰り返し、原告の職場環境を悪化させたものであり、原告の人格権を侵害するものであるから、原告の被った損害を賠償する責任がある。
被告らの不法行為は職務と密接な関連性があり、事業の執行につき行われたと認めるのが相当であるから、被告会社は使用者として不法行為責任を負う。
また被告会社は、職場環境を調整する義務があったのに、十分な調査を怠り、被告らの報告のみで判断して適切な措置を執らず、しかも本件解雇撤回後も、被告Aの下で勤務させ、仕事の内容を制限するなどし、職場環境を調整する配慮を怠ったものであり、この点に不法行為があるというべきである。
さらに、被告会社は、解雇権を濫用して原告を解雇したもので、この点についても、不法行為責任を負う。
本件不法行為の態様その他諸事情を考慮すると、原告の精神的苦痛は相当なものであるから、これに対する慰謝料は200万円(被告B及び同Aに対する関係では各80万円)が相当である。
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