タバコの火の押し付け等でうつ病発症
京都(消費者金融会社)部長うつ病事件
(京都地裁平成18年8月8日判決)
消費者金融会社(被告)の営業部長(原告)は、社長からの指示で持家顧客の登記簿謄本を取得したが、これを社長に報告しなかったため、叱責と3か月分の減給処分を受けた。
その後も原告は社長から罵詈雑言を浴びせられていたところ、忘年会の席上、社長からタバコの火を頬に押し付けられて火傷を負った。
原告はその前から不眠、集中力の低下等の症状を呈していたが、タバコの火の押付け以降うつ病と診断され、部下2名の同時休暇を承認したとして降格処分を受けた。
原告はうつ病のため休んでいたが、社長の指示で出勤させられ、年俸を大幅に減額されて、タバコの火の押付けについて社長を傷害罪で告訴した上、その約1年後に退職した。
原告は被告に対し、うつ病発症前に受けていた貸金と実際の賃金との差額4,660万円余、慰謝料1,000万円、弁護士費用566万円を請求した。
<判決要旨>
原告は社長への報告を怠ったものであるから、社長が原告を叱責し3か月の減給処分としたことは不法行為に当たらない。
一方、社長が原告に対し、「舐めとんのか」、「ぽけ」などの罵富雄言を浴びせたことは相手の人格を傷つけるものであり、頻繁にそのような罵詈雑言を弄すれば、それ自体が不法行為に当たる。忘年会出席者のうち原告にタバコの火を押し付ける者は上位の地位にある者と考えられる上、当時原告は社長の不興を買っていたことを考慮すれば、社長からタバコの火を押し付けられたとの原告の供述は採用できるから、社長のこの行為は不法行為に当たる。
原告はうつ病のための休暇中、呼出しを受けて出勤し、加えて、症状の改善が認められないこと、失職すれば生計の手段がなくなることを考慮すれば、原告が勤務を再開したのは、社長から「出勤できないなら辞めろ」と言われたためと認められ、これは安全配慮義務に違反し、不法行為に当たる。
原告のうつ病は、慢性的な長時間労働に加えて、上司の死により営業に関する全てが原告の責任になり、その矢先に登記簿謄本取得についてのミスが発生し、これが原因で発症したと認められ、休暇取止めと原告のうつ病慢性化との間には因果関係が認められる。
原告に対する罵倒、タバコの火の押付け及び同時休暇承認とうつ病との間に因果関係はないが、原告はこれらによって精神的苦痛を受け、その慰謝料としては、罵倒によるもの50万円、タバコの火の押付けによるもの300万円、同時休暇承認によるもの50万円が相当である。
うつ病慢性化による損害については300万円が相当であるが、原告には早期治療の機会を逸した過失があるから、その3割を過失相殺する。
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