雇止めへの仮処分申請で雑務の強要
結婚式場パートタイマー雇止め事件
(第1審 静岡地裁昭和61年7月4日判決)
(控訴審 東京高裁昭和62年3月25日判決)
(上告審 最高裁昭和62年10月16日判決)
<事件の概要>
原告らは、結婚式場を業とする被告に雇用され、10年近く勤務した後、1年契約のパート労働契約を締結し、原告Aは2回、同Bは1回更新した後雇止めされたことから、地位保全の仮処分を申請し、認容された。
原告らは職場復帰後、従前従事していた衣装、包装の仕事ではなく、鉄製門の開閉、草取り、ガラス拭き、床磨き等の業務に従事させられたため腕や背中を痛めて労災給付を受け、欠勤を余儀なくされた。
原告らはその後就労が可能となり現職復帰を求めたが、被告はこれを認めなかったため、原告らは雇用契約上の地位の確認及び賃金の支払い、各自への慰謝料100万円の支払いを請求した。
第1審では、口頭弁論時に弁済期の到来している賃金及び1年後までの賃金については支払いを求める理由があり、慰謝料は各自につき30万円と判示された。
<控訴審判決要旨>
本件雇用契約は、いずれかから格別の意思表示がない限り当然更新されるべきとの前提の.もとに存続、維持されてきたものであるから、期間満了によって終了させるためには、従来の取扱いを変更して雇用契約を終了させてもやむを得ない特段の事情の存することを要するところ、控訴人(第1審被告)は特段の事情につき何ら主張立証しないから、本件雇用契約はなお存続しているというべきである。
被控訴人(第1春原告)と控訴人との間で職場復帰後に取り交わされた労働契約書によると、被控訴人らの業務は、Aにつき衣装及び雑務、Bにつき包装及び雑務とされており、衣装、包装と全く関連性のない雑務を含むと解することは困難であるところ、和解契約締結に際しても特段控訴人から被控訴人らへの説明はなかった。
被控訴人らに開閉させた門は、従来は開けっ放しにされ、車の出入りの都度開閉する必要はなかったこと、床磨き、ガラス拭き等は被控訴人以外に専ら従事させられた者なく、専ら見せしめとしか解しようがないこと、被控訴人らは右仕事を命じられたことにより非常な屈辱感を味わわされたこと、これらの職務に従事させられた結果、Aは右腕を、Bは背中を痛め、それぞれ労災給付を受けたことが認められ、被控訴人らはこれら障害のため欠勤したが、その後現職復帰を求めても、控訴人は被控訴人らに衣装、包装の仕事をさせる旨表明したことはない。
以上によれば、控訴人は受領遅滞にあるから、被控訴人らは賃金請求権を失わない。
また、控訴人の被控訴人らに対する命令は、違法に被控訴人らの権利を侵害した不法行為に該当するものであるから、これによって被った被控訴人らの精神的苦痛に対する慰謝料として、それぞれ30万円をもって相当とする。
なお、本件は控訴人(被告)から上告されたが、棄却された。
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