暴言や退職強要や暴行を受けた女性従業員の差止め請求
女性従業員暴言等差止め請求仮処分申立事件
(東京地裁平成11年11月12日決定)
<事件の概要>
機械器具の販売等を業とする債務者(会社)の女性従業員(債権者)は、総務部から営業部に配転されたところ、席もなく、営業に必要な知識も与えられず、営業部社員(債務者丙)らは債権者に辞職を迫った。
その後、債権者は、業務成績劣悪による解雇、それまでの間の自宅待機を通告され、その1か月後に退職願の提出を執拗に迫られた。
丙は日常的に債権者を威嚇したほか、管理者らは細かな問題で債権者を威嚇したり、始末書を求めたりした。
その後債権者に対する誹誘・中傷がひどくなり、丙らは債権者に対し、「社員として不適格」、「精神異常者」、「てめえの顔鏡で見てみろ」などと暴言を吐いた。
債権者が外出して、丙に出会った際、「くそばばあ、ぶっ殺すぞ」などと怒鳴られ、首を後から掴まれ引きずられため、債権者は頚部挫傷で加療2週間と診断された。
債権者は会社に対し安全確保を求めたが、債務者らは「被害妄想」などと非難した。
債権者は、債務者らの行為が違法であり、これらは退職強要の一環であると主張して、名誉もしくは人格の侵害または暴行についての差止めを求めた。
<決定要旨>
人格権の内実をなす人格的利益が」生命、身体及び名誉と同様に極めて重要な保護法益であり、その人格権が排他性を有する権利といえる場合には、その人格権に対する侵害又は侵害のおそれがあることを理由に被害者は加寮者に射し侵害行為の差止めを求めることができると解される。
人に向かって養蚕専することは、−般に人に不快感を生じさせ、精神的苦痛を与えることもあるが、それだけではその人の生命又は身体という人格的利益を侵害したとは謎め難い。
しかし、暴言等が、単に不快感を生じさせるにとどまらず、その人の自尊′むを傷つけ、名誉感情を害し、屈辱感、恐怖感などを生じさせて精神的苦痛を被ることが予想されるほどのものと認められ、かつそれ昏が相当多数回にわたり反復継続している場合には、暴官等はその人の人格的利益を侵害する。
債務者らの侵害行為が行われるに至った経緯、内容、態様、頻度や回数などに照らせば、仮に債務者らの退職強要、侵害行為がすべて事実だとしても、それだけでは今後も債務者らの行為が反復継続され、いずれ債権者の身体や精神に何らかの障害が発生することが予想されると認めるには足りない。
したがって、仮に債務者らが債権者に向かって暴言等の行為をし、会社が債権者を監視等していたとしても、これが債権者の人格的利益を侵害するおそれがあるということはできない。
丙が債権者に暴行を加えたのは偶発的な出来事であって、会社が今後債権者に暴行を加えさせることが予想されることも認め難い。
以上によれば、債権者は丙に対し暴行の差止めを求めることはできないし、会社に対し、その社員らをして債権者に暴行、威嚇、監視等をすることの差止めを求めることもできない。
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