業務上違反の発覚で自殺
北海道(銀行員)自殺事件
(第1審 札幌地裁平成17年1月20日判決)
(控訴審 札幌高裁平成19年10月30日判決)
<事実の概要>
被告銀行で入行10年目の行員甲は、投資信託の販売目標に通せず、会議の場で販売実績についての質問に答えられなかったため、支店長から厳しい注意を受けたほか、引継書を提出せずに休暇を取ったとして上司から注意を受けた。
甲は、他社からファームバンキングサービスの解約の申し出を受けたにもかかわらず、禁止されている立替払いを行っていたところ、それが発覚して必要書類を求められたことから、そのまま銀行を立ち去り、その3日後に自殺した。
甲の父親(原告)は、被告における業務が甲に過重な負担を強いるものであり、甲はその負担に耐えきれずにうつ病に罹患して自殺したとして、被告に対し、総額1億3,000万円の損害賠償を請求した。
<第1審判決要旨>
支店長等が甲に対して会議で行った指導は相当厳しいものと推認されるものの、甲に対して限度を超克た過剰に厳しい指導を行った事実を認めることはできない。
また、甲は思うように販売実績を上げることができず、支店長から厳しく指導されるなどして相当のストレスを感じていたとは考えられるが、引継書を提出せずに休んだことを除き、甲の業務や言動に関して特に異常な点は見受けられなかったこと、精神障害が発病したとの診断はなされていなかったことからすれば、甲がうつ病にり患していたと辞めることは困難である。
したがって、甲の自殺と業務との間に相当因果関係を諦めることはできない。
甲が社会通念上相当な範囲を超えた過剰な業務を負担していたとまでは認められず、また支店長らが甲に対して過剰に厳しい指導やいじめを行っていたとも認められない以上,甲が本件立替払の発覚について悩み、自殺に至ったとしても、あくまでも甲の個人的な考え方や受け止め方によるものであり、甲の自殺について業務自体との相当因果関係を認めることはできない。
甲には、引継書を提出せずに仕事を休んだ以外に異常な言動は見受けられず、甲から業務の変更等を求める申し出もなかったことに照らすと、被告において、甲の自殺等不測の事態が生じうる具体的危険性まで認識し得る状況にあったとは認められないから,被告において、甲の労働時間又は業務内容を軽減するなどの措置を採るべき義務が生じたということはできない。
控訴審では、甲が軽症のうつ病に雁思し、それも自殺の一因であるとしながら、被控訴人(被告)において、甲の自殺の危険性まで認識し得なかったとして、控訴人(原告)の控訴を棄却している。
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