窃盗の疑いによる所持品検査
埼玉(物流会社)所持品検査事件
(浦和地裁平成3年11月22日判決)
<事件の概要>
引っ越し作業の責任者である原告は、下請会社従業員らと共にK宅の引っ越し作業を行った際、財布らしい小物の置場を移したところ、後刻Kから被告営業所に対し財布がなくなった旨の抗議電話があった。
この電話を受けた乙は、営業所に戻った下請従業員らや原告に対しポケットの中身を出すよう指示し、原告らはこれに従ったが、乙は原告の服の上から身体を撫でて財布がないか確かめた。
翌日、Kから財布が見つかった旨の連絡があったことから、原告は怒って乙に抗議し、乙及び首都圏営業本部長が文書で謝罪したが、原告は、本件身体検査が就業規則に基づかず、原告を窃盗犯人として扱い、職場の同僚らだけでなく妻子に対する信用も傷つけられたこと、身体検査の過程で発見された腰痛用ベルトは秘密であったのに、これを侵害されたことなどを主張し、被告に対し慰謝料500万円を請求した。
<判決要旨>
使用者が従業員に対して行う所持品検査は、常に被検査者の人権侵害を伴うものであるから、それが企業にとって必要かつ効果的措置であるとしても当然に適法視されるものではなく、少なくともこれを許容する就業規則その他の根拠に基づいて行われることを要するほか、合理的な理由に基づいて、−般的に妥当な方法と程度で、従業員に画一的に実施されるものでなければならない。
被告においては、引っ越し作業員の所持品検査を許容する就業規則等は存在しないから、本件所持品検査はこの点で既に違法である。
原告が本件所持品検査を明示的に拒否したことは認められないが、翌日組合の執行委貞に話すとともに、乙に対し怒りをぷつけたことを考慮すると、本件所持品検査を承諾していたとは到底考えられない。
そして、本件所持品検査は、ブラインドを降ろした室内で、原告の同意なしにその身体に触れて行われたものであるから、その方法が妥当であったとは言い難い。
本件所持品検査の方法は、原告が顧客の財布を窃取したとの疑いを持たれたとの印象を与えるものであるから、これにより原告の社会的評価が低下され、その名誉や同僚らに対する信用が侵害されたことが明らかである。
また、本件身体検査により原告の腰痛防止ベルトが暴露され、プライバシーが侵害されたということができる。
原告が従来社内で受けていた評価、本件所持品横査の目的・態様、その後の乙らの対応等、諸般の事情を考慮すると、原告が名誉毀損等により被った精神的苦痛を慰謝するためには金30万円が相当である。
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