異動と退職勧奨と受け止め自殺
転籍出向者人事異動後自殺事件
(名古屋地裁平成19年1月24日判決)
<事件の概要>
平成6年4月に、被告の前身会社に在籍出向した甲は、同年11月にうつ病と診断され、その後寛解に至ったところ、平成13年4月の合併により設立された被告に転籍し、さらに平成14年11月に保守センターに異動を打診された。
甲は長時間通勤を理由に難色を示したことから、被告は説得に努めたが、この過程において、甲が「自分を辞めさせたいのか」と言ったことに対し、上司が「勝手にしたらよい」と述べ、甲は妻に対し、「異動に伴う件で頭に来た。嫌なら辞めろと暴言を受けた」とメールを送信した。
甲は最終的には異動を受け入れて異動先で勤務を始めたが、その5日後に自殺した。
甲の妻及び子(原告ら)は、甲の自殺は、長時間の過重労働などにより心理的負荷を受けうつ病を発症し、その後の異動の強行によってこれを悪化させたことによるとして、被告に対し、安全配慮義務に基づき、逸失利益、慰謝料等を請求した。
<判決要旨>
甲が従事した業務が未経験であったとしても、かかる業務が社会通念上許容される範囲を超える過剰な業務であったということはできない。
平成6年6月から10月までの間における甲の時間外労働時間は、月47時間から69時間に及んでいるが、この間の休日出勤は1回で、有給休暇を5日間取得していることからすると、甲は時間外労働による疲労やストレスを過度に蓄積する状況にはなかったといえる。
したがって、当時のうつ病発症と業務との間に相当因果関係はないといわざるを得ない。
保守センターは、甲が所属していた部署の一部門であり、甲はその業務に一定の理解を有していることから、客観的に不可能な業務を強いるものとはいえない。
甲は、上司らの3回程度の説得を、自らを退職に追い込もうとする意図と、否定的かつ重大に受け止めたと推認される。
甲は、最終的に本件異動に応じぎるを得ないことに強い心理的負荷を受け、うつ病を罹患したといえるから、本件異動の打診及び説得経過とうつ病増募及びその後の自殺との間には相当因果関係があるというペきである。
異動に伴う業務量や通勤時間の変化については甲に説明されており、その説得状況は、通常の精神状態にある者に対するものであったならば、自殺等に至ることを予見できるようなものであったとまではいえない。
甲は、本件異動の説得当時、気分が憂鬱である等の所見があるものの、入院等の勧奨を受けていないことからすると、被告は当時、甲がうつ病に羅患していたことを認識しておらず、またこれを認識することが可能であったということはできないから、甲の自殺について被告の安全配慮義務速度を問うことはできない。
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