社長とトラブルで配転と懲戒解雇
電気機械器具等製造会社総務担当配転事件
(東京地裁平成14年9月30日判決)
<事件の概要>
通信用電気機械器具等の製造販売を業とする被告は、業績低下を踏まえて、組織再編及び人事異動を行ったが、原告は異動の対象とならなかった。
被告社長は、取引先の会長の叙勲祝いに原告に調達させたワインを持参して同会長宅を訪問したが、留守であったことから、多数の従業員の前で、会長の在宅を確認しなかったとして原告を叱責し、「ワインはてめえが持って行け」と指示したが、原告はこれを拒否した(ワイン事件)。
被告はワイン事件に関し、原告に始末書の提出を命じた上、譴責処分に付した。
被告はその3か月後、原告に対し営業への配転を内示したが、原告は総務課管理職として採用され、職種限定の労働契約であること、本件配転の真の動機は、原告を不慣れな営業に就かせていじめ、退職に追いやろうとするものであること、本件配転命令及びその拒否を理由とする本件懲戒解雇処分はいずれも無効であることとして、被告従業員としての地位の確認と貸金の支払いを求めた。
<判決要旨>
本件労働契約は、原告を総務担当に就けることを目的としてなされたものと認められるが、総務管理職は専門職とまではいえないところ、就業規則では従業員を配転できるとされていること、異種間の配転をした例があることからすると、本件配転命令が直ちに違法になるということはできない。
被告においては、売上高が下降しており、営業力を強化するため組織変更をしたこと自体に合理性がないとはいえないが、本件懲戒解雇の後にも営業職の人員を配置していないなど、営業課の増員の必要性は乏しかったといわざるを得ない。
また被告代表者が、「社会性に女ける点がしばしば見受けられる」と評する原告を営業課に配置することは、営業重視の方針と−貫性を欠いでいることからすると、専門外の原告を配置する必要性は極めて希薄であるといわぎるを得ない。
そもそも、これまで勤務評価が常に立位であった原告を、被告代表者が上記のように評する理由は、ワイン事件での原告の対応が不興をかったことにあると認めるのが自然であることをも踏まえると、本件配転命令が、自らの専門外の職種に強制的に就けさせることで、原告を退職に追い込もうとする意図のもとにされたのではないかという疑いを払拭することができない。
これらの事情を総合すると、本件配転命令は、業務上の必要性を欠くと認めるのが相当であり、権利の濫用であり無効であって、これが無効である以上、本件懲戒解雇もその前提を欠き無効である。
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