女性の容姿で出勤で懲戒解雇
性同一性障害者解雇仮処分申立事件
(東京地裁平成14年6月20日決定)
<事件の概要>
性同一性障害の診断を受けた債権者は、勤務する会社(債務者)に対し、@女性の服装で勤務したい、A女性用トイレ及び更衣室を使いたい旨申し出、これを拒否されたことから配転拒否と回答し、出社を拒否した。
債権者は債務者から送付された配転辞令を破棄し、抗議文と共に債務者に送付したが、その後辞令に従う旨の謝罪文を送付した。
その約2週間後、債権者は女性の服装、化粧をして配転先の席に着いたところ、債務者から自宅待機命令を受けた。
その後も女性の容姿で出社する債権者に対し、債務者は女性の服装をしないとする命令に従わない場合は懲戒処分を検討する旨通知したが、債権者は裁判所に懲戒処分の差止め命令を求め、女性の容姿で出社し続けた。
債務者は債権者に対し、懲戒解雇通知書を送付したところ、債権者はその無効を主張し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認と貸金の支払いを請求した。
<決定要旨>
債権者は本件申出が受入れられなかったことを主な理由として配転を拒否したもので、正当な理由がなく、懲戒解雇事由に該当するが、債権者は謝罪文を送付し、配転先で在席しているのみならず、債権者の性同一性障害に関する事情に照らすと、配転命令拒否が懲戒解雇に相当するほど重大かつ悪質な企業秩序違反ということはできない。
債権者は、従前は男性の容姿をして就労していたが、初めて女性の容姿での就労を申し出、突然女性の容姿で出社したものであり、社員はこれにショックを受け、強い違和感を抱いたものと認められる。
そして、社員の多くが債権者の行動の理由、性同一性障害についてほとんど認識がなかったであろうことに照らすと、社員や取引先等の相当数が嫌悪感を抱くおそれがあることが認められ、債務者が社内外への影響を憂慮し、当面の混乱を避けるために、債権者に対して女性の容姿で就労しないように求めること自体は−応理由がある。
しかし、債権者は本件申し出をした当時には、精神的・肉体的に女性としての行動を強く求めており、他者から男性としての行動を要求されると多大な精神的苦痛を被る状態にあったということができるから、債権者が債務者に対し、女性の容姿での就労を求めることは相応の理由があるというべきである。
そして、債務者において、本件申し出に基づき、双方の事情を踏まえた適切な配慮をしてもなお女性の容姿をした債権者を就労させることが、企業株序文は業務遂行において著しく支障を来すと諦めるに足る疎明はない。
以上によれば、債権者による本件服務命令違反行為は、懲戒事由に当たり得るが、懲戒解雇に相当するまで重大かつ悪質な企業秩序違反と認めることはできない。
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