経営陣批判で賞与の低査定
広島(化学薬品製造等会社)降格等事件
(第1審 広島地裁福山支部平成10年10月12日判決)
(控訴審 広島高裁平成13年5月23日判決)
<事実の概要>
女性主任(4級・監督職)である原告は、指導力等に問題があるとの評価を受けていたところ、平成6年6月、心酔する取締役が再任されなかったことから、事務所内で被告の経営陣を批判する発言をした(事務所事件)。
この発言について会長は原告に注意したが、原告は非を認めず、かえって反撃に出た(会長室事件)。
以上の経緯から、直後の人事評定において、原告は監督職の能力の欠如、会長に対する行為の双方を考慮し、3級への降格処分を受け、その旨社内に告示された。
これに対し原告は、被告から違法な降格処分、昇給差別及び賞与の減額を受けた上、降格の告示により名誉を毀損されたとして、被告に対し、差額の給与及び賞与の支払い、降格処分の無効確認及び慰謝料の支払い並びに謝罪文の掲示を請求した。
第1審では、本件降格処分は違法とはいえないこと、原告のEランクの昇給は違法ではないこと、降格処分に対する慰謝料請求及び告示についての謝罪広告は理由がないこととする一方、賞与の減額に労基法91条(制裁規定の制限)違反があったとしたことから双方が控訴に及んだ。
<控訴審判決要旨>
1審原告には監督職としての能力に疑問を示す評価がされていること、勤務時間中に大声で会社を批判することは監督職の能力評価で問題とされてもやむを得ず、会長に対し、経営陣の人格的非難を行っている点で負の評価を受けても当然であって、本件降格処分が違法とは認められない。
本件告示は、1審原告の名誉を毀損する意図ではなく、その内容も事実を従業員に知らせるだけであって名誉毀損には当たらないから、これを理由とする慰謝料請求及び名誉回復措置を求める請求は理由がない。
平成7年4月の昇給査定については、この人事評定期間において事務所事件及び会長室事件があったことなどからすると、この期の最終評定をEランクとしたことにつき、1審被告に裁量権の逸脱があったとは認められない。
平成8年4月の昇給査定については、2次評定がCでありながら最終評定がEとされたが、常務会において評価を変えた理由としては、事務所事件及び会長室事件やその後の1審原告の対応と推認するほかなく、このことは人事評定期間を前年度1年間と定めた人事考課規程に反するから、この期の昇給査定には裁量権を逸脱した違法がある。
その後の1審原告に対する評定もEとされているが、これも裁量権を逸脱した違法がある。
転職サイトを使いこなす!
スポンサードリンク
|
|