未入籍の夫や通勤手当詐取で解雇
私立幼稚園職員未入籍妊娠等解雇事件
(大阪地裁堺支部平成14年3月13日判決)
<事件の概要>
被告学園が経営する幼稚園に勤務する原告は、切迫流産等の診断を受け入院し、園長(被告)にその旨報告したところ、被告は原告を軽率と責め、暗に中絶を促した。
原告は絶対安静を指示されていたが、被告の反応もあって出勤したところ、数日後再入院を余儀なくされたため、被告は原告の後任を確保し、原告に退職するよう連絡した。
原告はその直後流産して職場復帰の希望を伝えたところ、被告は原告に退職届の提出を促した。
原告は地元の労組に加入し、被告と団体交渉をしたが、被告はミ原告が未入籍のまま妊娠し、住居を変更しながら届けずに通勤手当を詐取し、園児出席簿の作成を怠るなど、教育者として不適格であるとして原告を解雇した。
これに対し原告は、本件解雇は無効であるとして、教諭の地位の確認と賃金の支払いを要求するとともに、被告らに対し、精神的苦痛に対する慰謝料を請求した。
原告は、男性と同居を始めたにもかかわらず、被告学園には住所変更を届けず、通勤手当も従前の金額を受給しているから、服務規定に違反している。
しかしながら、原告は未入籍のまま転居した旨報告すれば、被告から厳しい叱責や強い退職勧奨を受ける可能性があると判断したことなど、報告しづらい状況を作った一困は被告にもあること、不正受給期間が約9か月と短期間であること等も併せ鑑みると、原告の服務規律違反の程度は重大とはいえない。
被告学園は、原告が長期間担任教輸としての職務を果たせなかったと主張するが、雇用機会均等法8条(原稿9条3項)によれば、妊娠又は出産による解雇は禁止されているところ、結局教員が学期途中に妊娠した事実をもって解雇理由になりうるから、その主張は不相当である。
原告は被告から軽率と非難され、妊娠はこれからも機会があると、暗に中絶を勧められ、原告が中絶を拒否すると、被告から園児のことをどう考えているかと問い質されるとともに、無責任と非難され、また育児休業中の代替要員の採用が難しい旨告げられて退職を勧められたことが認められる。
このような被告の一連の発言により、夏季保育のため出勤した原告は、流産という女性として耐え難い状態に陥ったにもかかわらず、被告は退職届の提出を執拗に求め、結局解雇したことが認められる。
以上によれば、被告の一連の行為は、原告の妊娠を理由とする中絶の勧告、退職の強要及び解雇であり、雇用機会均等法8条の趣旨に反する違法な行為であり、被告は不法行為責任を免れない。
また被告学園は被告と連帯して不法行為責任を負担する。
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