結婚指輪外しを強要され自殺
名古屋南労基署長(電力会社)自殺事件
(第1審 名古屋地裁平成18年5月17日判決)
(控訴審 名古屋高裁平成19年10月31日判決)
<事件の概要>
電力会社に勤務する甲は、入社18年日に主任に昇格して課長から「主任としての心構え」と題する文書の作成等厳しい指導を受け、時間外労働時間が急増し、しかも主任昇格後最初の人事考課が5段階評価の最低「E」とされたことなどから、うつ病を発症し、主任昇格3か月後に自殺した。
甲の妻(原告)は、甲の自殺は業務に起因するうつ病によるものであるとして、労基署長(被告)に対し、労災保険法に基づく遺族補償給付等の支給を請求したところ、同署長から不支給処分(本件処分)を受けたため、本件処分の取消しを請求した。
<第1審判決要旨>
課長は、時として甲の心情等について配慮に欠ける指導をすることもあり、甲はこれに対して萎縮的な態度を示すようになったと推認できることから、課長の指導も、継続的に甲に射し心理的負荷を及ぼしていったことが窺われる。
主任昇格は、甲にとって励みになった面はあるものの、課長の指導方法等怒も相まって、甲に対し相当程度の心理的負荷を及ぼしたと認められる。
甲の担当業務は、量的にも質的にもさほど困難な性質の業務であったとは認められないが、主任に昇格して以降は毎月80時間を超える時間外労働に従事したことによって、強い心身的負荷を受けたと辞めることができる。
課長は甲と面談した際、甲に射し、仕事に対する集中力を妨げるとして結婚指輪を外すよう指示したが、かかる発音は合理的理由に基づくものではなく、しかも甲に対する配慮を欠いた極めて不適切な発育といわぎるを得ない。
そして、甲が結婚して以降、常時指輪を身に着けていた事実に照らせば、結婚指輪に関する課長の発言が甲に対し強い心理的負荷を及ぼし、既に発症していたうつ病を増悪させたものと認められる。
甲にはうつ病親和的な傾向が見られるが、その性格が通常人の範囲を逸脱したものということはできない。
以上によれば、甲のうつ病の発症及び増悪とこれに基づく甲の自殺には業務起因性が諦められるから、これを否定した本件処分は違法である。
本件は被告が控訴したが、控訴審では、さらに課長が甲に対し「主任失格」、「いてもいなくても同じ」などと感情的に叱責したことを認定し控訴を棄却した。
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