営業目標不達成で退職勧奨と降格
医薬品等製造・輸入会社退職勧奨・配転降格仮処分申立事件
(仙台地裁平成14年11月14日決定)
<事件の概要>
医薬品等の製造・販売等を業とする債務者は、米国本社との間で売上目標額の大枠を決定し、これを各営業所ごと及び各営業職員ごとに売上目標額を設定したところ、債権者の成績は、ほぼ最低に近い状態であった。
こうした中、部長は債権者に対し転職を勧め、指示した売上目標が到底達成不能として債権者に退職を迫った。
債権者は、1か月余り入院し、退院後に出勤したところ、部長及び課長から再度退職を勧奨され、これを受けない場合は解雇する旨通告された。
その後課長は、事務所の全職員に対し、債権者に対し営業に関する情報や資料を提供しないようメールを送信した。
債権者は、さらに人事部長らから退職勧奨を受け、これを拒否したところ、単純作業に配転・降格され、賃金も約半額に減額された。
債権者は、本件配転命令後、電話対応、宅配便の発送・受入れ、廃棄物処理等を指示されたが、その業務は僅かであった。
債権者は、自分は営業職として採用されたこと、本件配転命令は賃金の減額を伴い、その目的は債権者を退職に追い込むための不当なもので無効であることを主張して、労働契約上営業職の地位にあることの確認と配転前の賃金の支払いを求めた。
<決定容姿>
債権者の営業成績の数億が低迷している原因は、営業努力による部分があるとしても、売上日標の設定自体に問題なしとしない上、売上実績の関係では担当症例数が少ないことや担当病院の多さ及び広大な担当地域も影響しているといわざるを得ず、債権者の営業成績をもって従前の賃金と比較して約半分とする本件配転命令の根拠とするには足りないというべきである。
疎明された事実、殊に債務者による債権者に対する執拗ともいうべき退職勧奨からすれば、債務者としては債権者を何とか退職に持ち込みたかったところ、債権者が退職に応じないために本件配転命令を発することになった経緯が明らかであり、本件配転命令以後の債権者の就業実態が営業事務職の名に値しない状態であることも併せ考慮すれば、債務者において債権者を稼働させる業務上の必要性を見い出すことはできず、また、債権者に再起の可能性を与えるためともいえず、むしろ、債権者の給与等級を下げることを目的としたものと判断せざるを得ない。
以上、債権者の営業実績とそれについての債権者の帰責性、降格の動機及び目的、業務上の必要性、降格の運用状況等を総合すると、債権者の賃金を従前の約半分とすることについて客観的合理性があるとはいえないから、本件配転命令に基づく債権者の降格は無効というべきである。
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