仕事ぶりとミスへの叱責で自殺
北海道(農業協同組合)販売部員自殺事件
(釧路地裁帯広支部平成21年2月2日判決)
<事件の概要>
町農協(被告)の販売部青果課に配属された甲は、係長の入院等により残業や休日出勤が増え、頭痛や肩凝り等により寝付けないようになった。
その後甲は係長に昇格したところ、長芋出荷用のおが屑にガラス片が混入する事件が発生し、課長から報告の遅れを叱責された。
翌日甲は課長らとともに検品作業を行ったが、ガラスのすべてを回収することはできなかった。
翌日甲が仕事が溜まっていると泣き言を言ったことに対し、課長は抱え込んでいる仕事を引き継ぐよう厳しい口調で3時間にわたり叱責したところ、翌日甲は早朝出勤した後、遺書を残して自殺した。
甲の妻(原告A)及び子(原告B)は、過重な業務負担により甲を精神病に罹患させ、自殺に至らしめたとして、主位的に不法行為、予備的に債務不履行を根拠として、被告に対し、逸失利益、慰謝料等総額7,029万円余を請求した。
なお、労基署長は、甲の自殺を業務上災害と認定した。
<判決要旨>
甲は、本件事件〔ガラス片混入事件〕当時うつ病に羅患しており、係長昇格によってさらにその業務負担が増え、そうした中で本件事件、課長による長時間の叱責等が起き、これらがさらに甲に対し強い心理的負荷になったことが推察でき、他に自殺の要因となる事情は見当たらないことも考え合わせると、甲の自殺は業務に起因すると認められる。
課長は、甲の業務量の増大を練熟し、同僚も甲の体調不良を認識していたが、これらに加え、甲の自己申告書には他部署への異動や増員希望の記載があったことも合わせると、被告は甲の疲労や体調不良による悩みを認識し、或いは認識することが可能であり、被告は甲の業務量を軽減する義務があったというべきである。
ところが被告は、1か月程度のアルバイトを増員したほかは、甲の業務負担軽減措置を講じておらず、甲を係長に昇格させているが、係長に相応しいか十分検討したか疑問があり、しかも初めて管理職に就く甲に対するフォローもしていない。
そうした中で、本件事件が発生し、さらに追い打ちをかけるように、その後処理作業の翌日課長による長時間の叱責があったのであって、これが決定的打撃になってうつ病を悪化させたと推認するのが相当であるから、被告は甲に対する安全配慮義務を怠ったというペきである。
甲の今後34年間の逸先制益は7,257万円余、妻と1歳の娘を残して自殺したこと、被告は甲の心身の変調を認識し得ペきであったにもかかわらず、何の配慮のないまま係長への昇格という無謀な人事を断行し、さらに本件事件の2日後に上司が長時間にわたって叱責した結果甲を自殺に追いやったことに照らすと、慰謝料は3,000万円が相当である。
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