反省を求められた店長が部下に暴力
衣料品会社店長暴力事件
(第1審 名古屋地裁平成18年9月29日判決)
(控訴審 名古屋高裁平成20年1月29日判決)
衣料品の製造・販売を業とする被告会社の店長代行を務める原告は、日誌に店長(被告)の仕事上の不備を指摘し、反省を求める記載をしたところ、原告は被告から追及を受け、頭部や背部をロッカーに打ちつけられたり、頭突きを食らわされたりして(本件事件)、頭部外傷、髄液鼻漏により入院した。
本件事件から2年9か月経過後、療養中の原告は管理部長に対し、電話で本件事件の報告書の開示を求めたところ、同部長は「いい加減にせえよ、お前何考えてるんかこりゃ−、ぶち殺そうかお前」などと声を荒げた(本件発言)ことから、原告は嘔吐して病院に搬送された。
原告は、被告から暴行を受け、その後管理部長から本件発言を受けたとして、被告及び被告会社に対し、休業損害、慰謝料、逸失利益、弁護士費用等総額5,932万円を請求した。
<第1審判決要旨>
被告は原告に暴行を加えたのであるから、これにより原告が被った損害を賠償すべき責任がある。
管理部長は、原告の生命、身体に対し害悪を加える趣旨を含む発言をしており、同部長が、原告がPTSDないし神経症との診断を受け、担当医から、被告会社の関係者との面談等を控える旨告知されていたことを認識していたことからすれば、本件発言は不法行為を構成するというべきである。
凡帳面で気が強く、不当な事柄に対して憤り、論理的に相手を問い詰めるという性格傾向を有する原告が被告から暴行を受けたこと、その後の被告会社との折衝のもつれを通じ、被告会社に対して、次第に忌避感、不安感、嫌悪感を感じるようになり、管理部長の暴言を受けたこと、調査会社による行動調査を受けたことなどが相まって、妄想性障害に羅患し、今日までその症状を維持させてきたと認められ、その障害の発生及び維持には、本件暴行が発症の発端になっており、本件発言のその症状に影響を及ぼしたことは否定し難く、本件事件及び本件発音と障害との間には相当因果関係がある。
かかる2個の不法行為は共同不法行為に当たるから、被告は原告が被った損害の全額について賠償責任を負い、被告会社も使用者として、損害の全額について賠償責任を負う。
休業損害1,904万円余、慰謝料500万円が相当であるところ、原告の損害発生及びその持続にはその性格的傾向による影響が大きいと認められるから、損害額の60%を控除するのが相当である。
本件は原告が控訴し、被告らも附帯控訴したところ、控訴審ではほぼ同趣旨で、賠償額を若干増額する判決が出された。
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