ずぼらな部下への行き過ぎた叱責
電機会社F工場反省書強要等事件
(東京地裁八王子支部平成2年2月1日判決)
<事件の概要>
電気機械器具製造等を業とする被告会社に勤務する原告は、サークル活動等のため次第に残業をしなくなったところ、製造長である被告や作業長らから、ビラの配布、機械等の片づけの不備、作業日報の不記載、作業中の居眠り、作業手順の誤りによる機械の故障、年休の取り方等について叱責され、反省書の作成を求められるなどしたことから、心因反応と診断され、半月の間欠勤した。
原告は、被告らの言動により欠勤を余儀なくされたとして、賃金の不払い分及び慰謝料500万円を、被告及び被告会社に請求した。
<判決要旨>
製造長は、その所属する従業員に射し、始末書等を求めることもできるが、裁量権の濫用にわたる場合は、違法性を有すると解される。
原告のビラ配布行為については就業規則違反が認められるから、これについて被告が原告に反省音を求めたこと、原告は使用した機械の片づけを怠り電機溶接機の電源を切らない危険な状態で退社したから、被告がこれについて反省書を求めたこと、原告が作業日報を記載せずに退社したことについて被告が原告に反省書を求めたことは裁量の範囲内である。
原告はスポット溶接機の使用方法を教わりながら、その手順を覚えずにバルブを締め、これによって溶接機が故障し、被告会社は数十万円の損害を受けたが、その責任は原告にあるから、被告が原告に反省書を求めたのも当然である。
原告は、年休を当日取得する場合、事務所に電話する方法を取っていたところ、被告は自分に直接承諾を得るよう指示し、これについて原告に始末書を求めたが、それまで原告は年休の取りかたを注意されたことはなく、被告の指示に従って態度を改めたのであるから、執拗に始末書の作成を求めたのは行き過ぎであり、裁量の範囲を逸脱したものである。
また、被告が作業長の報告を受けて、原告の後片づけの時間を計ろうとし、前日の後片付けの再現を求めたのは、裁量の範囲を逸脱したものである。
以上、被告が原告に反省書等を求めたのは、概ね裁量の範囲を逸脱したものとはいえないが、原告に対し休暇を取る際の手続き上の軽微な過誤について執拗に反省書等を求めたり、後片付けの再現を求めた被告の行為は、その心情には酌むべきものがあるものの、裁量の範囲を逸脱し、遵法性を帯びるものといわぎるを得ない。
原告の心因反応の原因は、被告の遵法行為にあると解されるから、被告及び被告会社は、これによる原告の精神的損害を姑博する義務がある一方、原告は仕事に対して真筆な態度で臨んでいるとはいい難いところがみられ、このため被告の過度の叱責や執拗な追及を自ら招いた面もあることは否定できないから、慰謝料は15万円が相当と認められる。
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