慣れない職場と上司の罵倒に脳梗塞死
亀戸労基署長(梱包会社)脳梗塞死事件
(東京地裁平成20年5月19日判決)
心房細動と診断され投薬治療を受けている甲は、入社22年経過後、岡山の本社から東京の本件会社に在籍出向した。
甲は、新たに就任した部長から執拗な叱責を受け続け、部長は甲について、管理部の仕事が不得手であると評価し、同じ大学、同じ会社出身ということもあって、甲を厳しく指導してきた。
甲は、新入生歓迎会で気分が悪くなり、出血性脳梗塞(本件疾病)を発症して手術を受けたが、右半身麻痔と重度の失語症という後遺症が残った。
甲は、本件疾病は業務に起因するとして、労基署長に対し休業補償給付を請求したところ、同署長は不支給処分(本件処分)としたため、同処分を不服として審査請求をしたが棄却された。
そして甲の死亡後、その地位を承継した甲の妻(原告)は、本件処分の取消しを請求した。
原告は、岡山在勤中に既に業務上のストレスにより発症していた心房細動が、本件会社出向後、@部長からのいじめともいえる異常な指導、A長時間通勤、B不慣れな勤務内容、C徹夜勤務、D本件疾病発症当日の外回りと歓迎会の司会による負荷により本件疾病を発症したと主張する。
甲の日記から、部長の甲に対する叱兼はかなり執拗であり、評価が低いことを甲が苦にしていたこと、部長も大学の後輩で同じ会社の出身であることから、甲に厳しくしていたことを自覚していたことは認められる。
しかし、その−方、甲の日記には、部長の言動には暴力的ないし名誉毀損的なものは認められないばかりか、部長との人間関係から来るストレスを受容しようとしていたこと等を窺わせる記載があることから、部長との人間関係による精神的負荷が甲にとって過大なものであったとまで認めることは困難である。
また、およそ組織における業務に従事するにあたっては、上司から必ずしも良好な評価を受けられず、それ故に厳しい指導を受けることは避け難いことであり、これを危険の現実化と評価することは困難であるし、部長の叱責が、上司による業務上の指導として、通常想定される範囲を超えるような言動が行われたことを窺わせる根拠は見出せない。
通勤による負荷は多分に労働者の住居選択によって左右されることに照らすと、これを労働時間に含める考え方は採用できない。
本件疾病発症10日前に甲は徹夜勤務したが、引き続いて長時間勤務等を強いられた事実は認められず、歓迎会の司会による負荷は業務上のものとは認め難い。
したがって、本件疾病は業務に起因するとは諦められない。
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