部下による中傷で自殺
渋谷労基署長(食堂店長)自殺事件
(東京地裁平成21年5月20日判決)
<事件の概要>
社員食堂の運営を行うR社の食堂店長であった甲は、入社にあたって推薦した乙により、@食券を悪用した売上げの着服、A金銭の窃取、B部下女性へのセクハラ、C部下が窃取したビールの飲酒等を内容とする本件ビラを重要な顧客である百貨店の労組に持ち込まれた。
このためR社は百貨店から従業員の規律について疑念を示され、甲らから事情聴取した結果、甲の不正は認められなかったものの、甲の店長職を解いた。
その1年後、乙は契約更新にあたり、再び本件ビラをR社の社長に送付し、甲は百貨店への出入りを禁じられたことなどから処分は必至と考え、子供らに遺書を遺して自殺した。
甲の子である原告らは、甲のうつ病発症及び自殺は業務に起因するとして、労災保険法に基づき、労基署長に対し遺族補償給付等の支給を請求したところ、不支給処分を受けたため、同処分の取消しを求めた。
<判決要旨>
甲は、R社が百貨店から管理責任を追及されたとして、始末書を提出させられた上、店長を解任させられ、本件ビラについて部長らから、約2時間にわたり詳細で糾問的な事情聴取を受けている。
そして、甲は百貨店との関係悪化の責任を感じ、給食事業から外れ、加えてトラブルメーカーを推薦してしまった負い目を感じていたとしても不自然ではない。
2回目の本件ビラについて甲が事情聴取を受けたことは、判断指針における「会社で起きた事件について責任を問われた」に該当するとしても、その心理的負荷の強度は修正されるべきであるし、長年従事した給食事業をタはれるという仕事の質の変化が客観的に予想される事態であったことを考慮するのが相当である。
加えて、乙が本件ビラを社長に送付したりしたことは、判断指針の「部下とのトラブル」に、本件ビラがR社と百貨店の関係悪化の要因となったことは「顧客とのトラブル」に該当し、これらが−体となって甲に心理的負荷を与えたと認められる。
してみると、本件ビラ間蔑について事情聴取を受けた心理的負荷の強度は「V」、その心理的負荷の総合評価は、「特に過重」なものとして、「強」とするのが相当である。
以上によれば、甲の精神障害の発症及び自殺は、同種の平均的労働者にとって、一般的に精神障害を発症させる危険性を有する心理的負荷を受けたことに起因して生じたものと見るのが相当であり、甲の業務と精神障害の発症及び自殺との間に相当因果関係の存在を肯定することができる。
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