内部告発で長期間の人事差別
宮山(運送会社)配転・昇格停止等事件
(宮山地裁平成17年2月23日判決)
<事件の概要>
貨物自動車運送事業を営む会社(被告)の従業員(原告)は、運送業界でヤミカルテルが行われていることを知って、新聞社や監督官庁に通報したり、副社長に不正を止めるよう直訴したりしたため、激しく退職を迫られ、これを拒否すると教育研修所で専ら雑務を与えられるようになり、昇格も停止させられた。
また被告は、市役所職員の兄に原告の退職を説得するよう圧力をかけ、説得できないなら市役所を辞めさせると言うなど、家族に対しても脅迫するなどした。
原告はあくまでも退職を拒否し続けていたところ、四半世紀にわたって雑務しか与えられず、他の職員より大幅に昇格・昇給が遅れたことから、原告は長期間にわたる昇格停止等により著しい精神的・経済的損失を被ったとして、慰謝料1,000万円、財産的損害3,970万円等を請求した。
<判決要旨>
報道機関への告発は、少なくとも短期的には被告に打撃を与える可能性があることからすると、ある程度被告の不利益にも配慮することが必要であり、副社長への直訴はいささか唐突過ぎるきらいがあり、内部努力としてやや不十分であったといわざるを得ないが、他方、発言力の乏しかった原告の当時の状況を考慮すると、原告の内部告発は不当とまではいえず、法的保軌こ億する。
原告が一切昇格しなかったことについて、原告の仕事ぶりが劣悪であったとは認められないし、熱意や積極性の表れにくい仕事内容からみて、その仕事ぶりを不利に評価することは著しく不公平であり、昇格差別を合理的に説明し得るとはいえない。
原告の内部告発は正当であって、法的保護に億するものであるから、人事権の行使においてこれを不利に扱うことは公序良俗に反する。
また、原告を長期間雑務にのみ従事させたこと、原告の昇格を停止して賃金格差を生じさせたことは、人事権の裁量の範囲を逸脱した違法なものであって、不法行為に基づき損害賠償すべき義務がある。
また、人事権の裁量を逸脱した場合には債務不履行責任を負うべきところ、被告は原告に対し、債務不履行に基づく損害賠償責任を負う。
新研修所に移った際、異動を拒んだり、異動先について現実的でない希望を述べるなどした原告の態度には、その後の処遇で不利益を受けてもやむを得ないものがあることを総合考慮すると、慰謝料は208万円が相当である。
また、原告と同期に入社した4分の3が退職しているところ、現在在籍している者は平均よりも積極的評価を受けている可能性があることから、その平均と比較することは適当ではなく、賃金格差は最も昇進の遅い者の7割と認めるのが相当である。
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