署長のいじめで自殺
地公災基金神戸市支部長(消防署)自殺事件
(第1審 神戸地裁平成14年3月22日判決)
(控訴審 大阪高裁平成15年12月11日判決)
<事件の概要>
50歳を過ぎて初めて消防署の内勤である管理係長に就いた甲は、かつて激しく対立した署長から、経理関係の決済等に関して部下の面前で激しく叱責・罵倒され、書類を叩きつけられるなどした。
甲は管理係長に就任以降、月間30時間を超えるような超勤を行うようになり、惟怪しきって出勤拒否状態になり、うつ病と診断された。
甲は半年後に異動となったが、その後も断続的に3か月、半年と入院を繰り返し、職場復帰した後、作業中に全治3か月の骨折傷害を負って休業し、出勤できないまま、負傷3か月後に自殺した。
甲の妻(原告)は、地方公務員災害補償基金神戸支部長(被告)に対し公務災害認定請求をしたところ、これを棄却する処分を受けたことから、同処分の取消しを請求した。
<第1審判決要旨>
甲は、署長とは以前上下関係にあったが、署長のワンマンぶりに我慢できず、甲から異動を申し出たことがあり、この事実によれば、管理係長への就任は、甲に対し、初めて携わる業務に対する不安及び緊張といった通常の配転に伴うストレスを超えた、かなりの精神的負荷を与えたことが窺われる。
署長が、甲の自尊心を傷つける指示・命令・叱責等を行ったため、甲に強度の心理的負荷を与えたことが認められ、署長は、部下に「殺したい」と思わせるほど精神的苦痛を与えたりしていたことなどの事実に照らせば、署長の指示命令等は、甲と同種の公務に従事し、又は公務に従事することが一般的に許容される程度の心身の健康状態を有する職員を基準としても、強度の心理的負荷を与えるものであったと認めるのが相当である。
また、甲の職務は署外での業務が多く、起動が相当多かったと推認されるから、甲が過重な公務を遂行していたことが認められる。
以上の事実を総合すれば、甲のうつ病については、その性格的要因が介在していたとしても、公務上のストレスがより大きな要因となって発症に至ったと認めるのが自然であるし、公務の内容・状況に照らせば、社会通念上、公務の遂行が過重な負荷を加え、これによって素因が自然的経過を超えて急激に増悪し、発症したと認めるのが相当である。
甲のうつ病は、一進一退の状態を続け、治癒には至らなかったこと、その間の仕事の変更や骨折により生じた新たなストレスも、独自に甲を自殺に向かわせる要因となったとまでは認められないこと、−般的にうつ病患者の自殺念慮は強いことなどを総合すると、本件うつ病と自殺との間には相当因果関係があると認めるのが相当である。
本件は被告が控訴したが、原審と同様の理由で棄却された。
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