配転拒否で出向や低い人事考課
レストランチェーン店店長配転拒否・出向人事考課事件
(大阪地裁平成21年10月8日判決)
<事件の概要>
原告は、平成9年2月に、飲食店を全国展開する被告に入社し、店長A職、マネージャーB職を経て平成13年10月にマネージャーA職に昇進した。
しかし原告は、部下の不祥事を理由に平成14年10月には店長A職に降格されるとともに、東京への配転(本件配転)命令を受けた。
これについて原告は、子供の病気を理由にその効力停止の仮処分を申請して認容されたところ、同年12月、関連会社の大阪D社への出向を命じられるともに、給与を34万円から30万円に減額された。
原告はD社への出向中、マイナス25度の冷蔵庫内で食材の仕分け作業に従事し、勤務態度について上司から注意を受けることはなかったが、4年間で8回にわたる人事考課は、通常は概ね60点台のところ、例外的な50点という低査定であった。
被告は、差額貸金の支給や慰謝料の支払いを命じた別件判決が確定した後、平成18年11月に原告を営業部門に戻したが、平成19年夏期の原告の査定を54点とした。
原告は平成20年2月末に被告を退職したが、別件判決で本件出向は不法行為とされたにもかかわらず、原告に対するD社への出向命令を維持して過酷な業務に従事させるなどしたとして、慰謝料365万円を、不当な人事考課及びこれによって原告が退職に至ったことに対する財産的損害及び慰謝料として1,139万円余を被告に請求した。
<判決要旨>
昇格の決定にあたっては、人事考課の結果を踏まえた被告の広い裁量が前提とされているから、雇用契約上、原告が被告に対して上位の職位に昇格させることを求めることはできないし、上位の職位に就いたことを前提とする賃金請求をすることもできない。
本件出向命令による精神的苦痛と相まって、前記高裁判決(平成17年1月25日)以降、原告はそれまで以上に強い精神的苦痛を甘受せぎるを得ない状況に置かれ、かかる状況のもとでD社における就労を強いられたものと認められ、そうすると、前記高裁判決後平成18年11月1日までの期間、原告をD社において就労させたことについて、被告は原告に射し不法行為責任を負うべきものと認められる。
原告は、D社出向期間中、人事考課において平均を大幅に下回る異常に低い点数しか与えられなかったことは明らかである。
労働契約関係において、使用者が行う考課ないし評定については、基本的には使用者の裁量的判断で行われるペきものであり、原則として違法と評価されることはないと解される。
しかしながら、使用者が嫌がらせや見せしめなど不当な目的のもとに特定の労働者に対して著しく不合理な評価を行った場合などには、労働契約上又は不法行為法上遵法の評価をするのが相当である。
本件についてみると、被告が作成した原告に関する考課表は、特段の改善点の指摘がないにもかかわらず、一貫して他の従業員と比較して異常に低い点数しか付けられていないほか、大きく減点される項目が考課表ごとに−貫していなかったり、2次考課者が10点以上も1次考課の点数を下げたりしており、およそ正当な人事考課を行う意図をもって作成されたものとは認め難い。
かえって、例外なく、2次考課の点数は、1次考課の点数を追認したか、さらに低下させた点数でしかない事実、D社出向中に原告に対して具体的な改善指導が行われた形跡がない事実に照らすならば、被告は、原告について始めから低い評価にする意図をもって、形だけの人事考課を行っていたとしか考えられない。
このことに、原告が束慕への異動に対して難色を示すや否や被告が法的根拠なく本件出向命令を発した事実、D社出向中、原告が勤務態度について上司から注意を受けたことはないにもかかわらず、一貫して低い評価を継続させた事実を考慮するならば、D社出向期間中に原告に対して行われた異常に低い評価は、人事権を甚だしく濫用したものとして不法行為に当たると認められる。
被告の不法行為による原告の精神的苦痛を慰謝するための慰謝料としては200万円をもって相当と認める。
これに加え、被告が人事考課を行っていた期間は、原告のD社出向中の全期間にわたる概ね4年間にわたること、正当な人事考課がなされなかった場合には昇格の機会すら与えられないことになり、このことにより原告は強い不遇感、焦燥感を感じたであろうことは想像に難くないこと、正当な人事考課がなされなかったこと応より原告は賞与額においても不利益を被った可能性が高いこと専一切の事情を考慮すると、慰謝料は300万円、弁護士費用は30万円が相当である。
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