長髪やひげで窓口業務外し
郵便局身だしなみ基準事件
(第1審 神戸地裁平成22年3月26日判決)
(控訴審 大阪高裁平成22年10月27日判決)
<事件の概要>
原告は、口ひげ(唇の幅)及びあごひげ(唇の幅で約1cm)を生やし、引っ詰め髪にしていたが、灘郵便局へ配転が決まるまでは、これについて注意を受けることはなかった。
原告が灘局に赴任すると、A課長及び後任のB課長らは、髪を切り、ひげを剃るよう執拗に指導したが、原告はこれに応じなかった。
郵政公社(被告)では、統一的な「身だしなみ基準」を定め、「長髪は避ける」、「ひげは不可とする」とした。
郵便課(内勤)の業務内容は、「窓口」、「発着」、「特殊」、「通常」の4種類、勤務時間帯は、「早出」、「日勤」、「夜勤」、「深夜勤」の4種類があったところ、原告は「特殊」業務の「夜勤」のみ命じられた。
原告は、身だしなみ基準に違反していないこと、「特殊」業務、「夜勤」のみに就かせることは人事権の濫用であり、違法な人事評価により職能資格給を停止させられたとして、被告に対し、手当の損害額のほか、慰謝料150万円を請求した。
<第1審判決要旨>
被告が新たに身だしなみ基準を定めたことは−定の合理性が認められるが、労働者が自己の髪型やひげ等に関して行う決定は、本来個人の自由に属する上、これに対する制約が勤務時間を超えて私生活にも影響を及ぼすものである。
郵便窓口の利用者は、職員が特別に身なりを整えて応対することまでは期待していないから、男性の長髪、ひげを不可とするのは「顧客に不快感を与えるようなひげ及び長髪」に限定すべきである。
したがって、整えられた原告の長髪及びひげは、いずれも公社身だしなみ基準が禁止する男性の長髪及びひげには該当しない。
被告が原告を「特殊」業務の「夜勤」にのみ担務指定した理由は、原告が身だしなみ基準に違反しているとの判断に基づくと認められるから、その指定は裁量権を逸脱した違法なものというべきで、原告がこれによって被った損害を賠償する責任を負う。
また、原告について、身だしなみ基準を遵守していないことを前提に行われた本件人事評価は、評価権者が有する裁量を逸脱したものとして違法となる。
A課長及びB課長らによる原告への指導は、長髪及びひげは一切認めないとするもので、この指導は違法というべきである。
原告に「特殊」業務のみ担当させることは、職務経験を広げる機会を喪失させ、加えて原告は上司からひげをそり、髪を切るよう繰り返し求められたことにより、一定程度の精神的苦痛を受けたと認められるから、慰謝料は30万円が相当である。
本判決は被告が控訴したが、棄却された。
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