成績不良との叱責によりうつ病発症退職
鳥取(生命保険会社マネージャー)うつ病退職事件
(鳥取地裁米子支部平成21年10月21日判決)
<事件の概要>
被告生保会社の営業所マネージャー(原告)は、顧客Tの死亡について告知義務違反の教唆を疑われた。
原告は、Tの妻に対し保険金の支払いは難しいと告げたところ、同妻は被告会社本社に抗議の手紙を送付し、結局保険金は支払われたが、原告はその手紙への関与を疑われこれを否定した。
営業所長(被告B)は原告の班の成績が伸びないことから、慣行に反し、原告の納得を得ないまま班を分離させ、支社長(被告A)は、他の職員の前で原告に対し「この成績でマネージャーが務まると思っているのか」等と叱責するなどした。
原告はその後ストレス性うつ病により欠勤し、その約2年後に休職期間経過により自動退職となった。
原告は、被告AはTの案件で原告を逆恨みし、被告Bはこれに追随していじめを行ったこと、原告の同意なく班を分離し、原告の収入を月間10万円減少させたこと、被告らの一連の行為によりうつ病を発症して退職を余儀なくされたことを挙げて、被告らに対し、慰謝料1,500万円を含む約9,800万円の損害賠償を請求した。
<判決要旨>
生保会社の営業職員にとって不告知の教唆は、その職業倫理こ反する不名誉なことであるから、上司として問いただす必要があれば、別室に呼び出すなどの配慮があって然るべきであって、被告Aの叱責は配慮に欠け、違法といわなければならない。
また、新マネージャー候補が原告の承諾のない中での就任を嫌がっていた状況下において班を独立させる必要性の証拠はなく、時間をかけた説得を怠った点において遵法との評価を免れず、被告らによる原告に対する叱責・罵倒も違法といわねばならない。
確かに当時の原告班の成績は芳しくなく、奮闘を促す必要があったことは否定できないが、、長年マネージャーを務めてきた原告に対し、いかにもマネージャー失格であるかのような叱責をすることば、原告の誇りを傷つけるもので、不法行為に該当する。
原告のストレス性うつ病は仕事上の問題を主たる原因とするものといえるが、被告らの行為から長期休業を必要とし自動退職せぎるを得ないほど重篤な症状を引き起こすことを予見することは不可能といわぎるを得ない。
被告らの不法行為との間に相当因果関係が謎められるのは、ストレス性うつ病の発症までであり、その重篤化や休業、退職との間に相当因業関係を認めるのは困難である。
原告はこれまでの罹患歴に照らすと、精神的ストレスによる変調を来しやすく、本件以外のストレスも発症に寄与している可能性も否定できないこと等の事情を斟酌すると、慰謝料は300万円、弁護士費用は30万円と諦めるのが相当である。
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