強姦による妊娠で退職強要
バスガイド妊娠解雇事件
(第1審 松江地裁益田支部昭和44年11月18日判決)
(控訴審 広島高裁松江支部昭和48年10月26日判決)
<事件の概要>
旅客運送事業を営む被告に雇用される新人バスガイド(原告甲)は、採用後間もなく同じ従業員宿舎に居住するAに強姦され、その結果懐妊するに至った。
その約3か月後、営業所長は原告甲に対し、情交関係は就業規則に規定する素行不良に該当し、本来懲戒解雇であるところ、将来を配慮して依願退職とすると迫り、原告甲はこれに応じた。
その後原告甲は、退職の意思表示は、懲戒解雇事由に当たると信じ、これを避けるために行ったもので、虚偽表示、錯誤、詐欺、強迫によるもので、無効または取り消し得るものとして、雇用契約解約の取消しを求めたほか、被告は原告に情交関係の陳述を強制し、畏怖させて退職を強要し、これを公表して名誉を毀損したとして、被告に対し慰謝料200万円を請求した。
原告甲の父(原告乙)も慰藉料100万円を請求した.
<第1審判決要旨>
原告甲が雇用契約解約の意思表示をするに際し、数人の前で所長から情交関係を面罵、罵倒され、驚愕の余り何ら弁明もできず、かつ所長の退職届の要求がひどく強制的であって反発もできないまま退職届に署名押印したことが認められる。
原告甲の祖母が本件姦淫につき強く抗議したので解雇してやったと所長が語ったこと、Aに対する処分と著しい不均衡があるのみならず、副所長は本件情交が合意によるものとの資料作成に努力し、原告甲の退職を合理化しようとしている点も認められ、結局原告甲に対する退職の強要は、原告甲の祖母から受けた抗議に対する私怨から出たものといわぎるを得ない。
以上、原告甲には解雇される正当な理由は何らないというべく、原告から雇用契約解約の意思表示を強迫によって得たことはまさに違法であって、その意思表示は取消し得べきものといわなければならない。
男女の情交関係のような事項にあっては、当事者の意に反して強いて発表させようとすることは明らかに供述者の精神的自由を侵害した違法なものというべきであり、殊に本件において被告が原告甲に示した態度は、甚だしくその人格を傷つけているから、その違法性は極めて高いというペきである。
原告甲は、退職の強制が長く心理的圧迫になり、その後就職しても退職を強要された事実の暴露を恐れて一雇用先に長期間勤務することができない状態になっていたことが認められる。
また、18歳で未婚め原告がその意に反して自らの情交関係を陳述させられた精神的打撃により殆ど錯乱状態にあったということができ、慰謝料は30万円を相当と認める。
控訴審では、原告甲は当初はAに情交を強いられたとしても、その後もAと情交を継続して妊娠中絶した点において非難を免れぬ点があること、原告甲が現在結婚して家庭生活を営んでいること等を考慮して慰謝料を10万円に減額している。
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