貸付違反等を告発し懲戒解雇
山口県(市農協)懲戒解雇事件
(山口地裁岩国支部平成21年6月8日判決)
<事件の概要>
農協(被告)の職員である原告は、総代会の開催に先立ち、被告の役員及びその候補者らに対し、「公益通報者保護法に基づく内部通報について」と題し、@現職監事Bが貸付規程違反の貸付を行ったこと、ABの監事就任辞退を申し入れたが反省がなかったこと、BBの上記行為は懲戒解雇に当たること、CBの信用事業担当常務理事就任は不当であることなどを内容とする文書等(「本件文書」)の写しを郵送した。
被告は、本件文書により個人情報を漏洩したことは就業規則違反となり、原告は過去3度始末書を提出し、改善の見込みがないとして、原告を懲戒解雇したところ、原告は、本件懲戒解雇は無効であるとして従業員としての地位の確認を求めるとともに、定年時までの未払貸金、退職金、定年後再雇用の嘱託職員としての賃金等を請求した。
<判決要旨>
個人情報保護法の趣旨は、外部の者一般への情報提供の禁止を義務付けることにあるところ、本件の理事・監事候補は、被告の経営・監査に参画することが予定されているから、これらの者を「部外者」と評価することは困難であり、その情報提供が同法及び就業規則によって禁じられているとは容易に理解し得ない。
被告は、原告が、@始末書を3回提出し、うち1臥ま昇給停止処分を受けていること、A本件文書を理事、監事、その候補者等に配布して個人情報を漏洩したこと、B改善の見込みがないと認められることを摘示して懲戒解雇を行ったところ、懲戒解蕎後に新たに懲戒解雇事由として主張された事実は、実質的に解雇時の摘示事実に包摂されていると認められない限り、懲戒解雇事由として考慮することは許され
ない。
被告が一連の事実を主張している趣旨は、就業規則において重大な処分を複数回にわたって受けてもなお非違行為を繰り返すことをもって、企業秩序維持の重大な障害になっているとの懲戒事由を提示することにあるものと解されるが、上記一連の事実によっては、そのような重い処分を繰り返し受けながら新たな非違行為に出たことにはならないから、本件懲戒解雇は無効というべきである。
定年再雇用規程によれば、被告側に、再雇用する者を選別し、再雇用を拒否できる地位が留保されていると認められるから、原告が定年後当然に再雇用されたとはいえない。
転職サイトを使いこなす!
スポンサードリンク
|
|