遅刻や欠勤等を理由とする罵倒と暴行
家電等量販店派遣社員暴行事件
(東京地裁平成17年10月4日判決)
<事件の概要>
家電等量販店で勤務する派遣社員(原告A)は、@接客訓練中頭部を殴打され(第1暴行)、A仕事上のトラブルについて大腿を3回蹴られ(第2暴行)、B出社時刻について虚偽の報告をしたことから、社長の面前で頭部等を30回にわたって殴打され(第3暴行)、C出勤しなかったことから、上司が自宅に押しかけ、母親(原告B)の前で約30回にわたって足や膝で蹴る暴行を受けて傷害罪で告訴し(第4暴行)、D遅刻及び出勤時刻の虚偽報告について謝罪を強要される(強制謝罪)などした。
原告Aは、第1暴行、第2暴行による精神的苦痛に対する慰謝料として各100万円、第3暴行に対する慰謝料として200万円、第4暴行及び強制謝罪に対する慰謝料として300万円を請求した。
また、作家である原告Bは、息子の暴行に接したことにより急性ストレス反応状態に陥り、その後も重度のうつ状態が継続したとして、慰謝料500万円を含む合計2,584万円の損害賠償を請求した。
<判決要旨>
第1暴行は、ポスターを丸めた紙筒様の物で頭部を約30回殴打した後、クリップボードで頭部を20回殴打した暴行の程度等を考慮すると、教育目的があったとしても違法性がないとはいえない。
第2暴行は、原告Aがミスを諦めて謝罪したところ、派遣先の上司が激昂して膝で大腿付近を蹴ったもので、派遣先会社は使用者として責任を負う。
第3暴行は、原告Aの派遣元の上司が原告の入店時刻の虚偽報告を知って、事務所で襟首をつかんで頬や頭部を殴打するなどしたほか、原告Aの就労先の便所を掃除して便器をなめることを強要する発言をしたもので、社長は制止する余地があったのにこれをしなかったこと、これがその事業を遂行するために行われたことなどを考慮すると、加害者の行為及び社長の行為も違法な権利侵害に当たる。
第4暴行は、第3暴行で原告に暴行を加えた上司が原告の自宅を訪れ、説得に耳を貸そうとしない原告Aの言動に激昂して、主に個人的な感情で原告Aに暴行を加えたもので、強制謝罪もその延長線上にあると認められることからすると、社長がこれ阜を予見し、回避する措置をとるべき注意義務があったとはいい難く、防止しなかったことが権利侵害行為と認めることはできない。
第1暴行の程度、これが従業員が数人いる中で行われたこと等を考慮すると、慰謝料は20万円が相当である。
第2暴行の程度、これが店舗内で行われたこと、そのきっかけが原告Aの落度にあり、それにより会社もー定の迷惑を被っていることなどを考慮ずると、慰謝料は10万円が相当である。
第3暴行の程度等を考慮すると、慰謝料は30万円が相当である。
第4暴行の程度、これによる儒者の程度及び謝罪強制の内容等を考慮すると、慰謝料は100万円が相当である。
第4暴行は、原告Bに対する関係でも権利侵害に当たると謎められるが、もともと原告Bに軽度のうつ病があったことなどを考慮して損害額の3割を減額し、損害胎倍額は403万円余となる。
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