横領の疑いで転勤命令
クレジット債権管理組合等事件
(福岡地裁平成3年2月13日判決)
<事件の概要>
クレジット債権を有する等の者によって構成される被告組合(組合)は、業務執行を組合員の1人である被告会社(会社)に委託していた。
被告丙は組合を設立した者で、会社代表取締役の夫であり、原告甲及び同乙は、組合の福岡事務所に勤務していた。
組合の事務所長A及び係長Bは、2年間で4,800万円を横領し、いずれも解雇、退職となったが、この事件後、被告丙は原告らに対し、「お前がやったんだろう」などと追及し、原告らを自宅待機とさせた。
原告らが職場復帰を求めたところ、組合は原告らに対し東京事務所転勤を命じ、原告らがこれに従わない旨通知したところ、会社は3回にわたって東京事務所への出勤を命じた。
原告甲は、当時妻が妊娠しており、原告乙も近く結婚が予定されていたことから、転勤命令を拒否し、その翌月共に退職した。
原告らは、自宅待機、東京転勤命令等により退職を余儀なくされたとして、会社に対し慰謝料500万円、組合に対し退職金、被告丙に対し慰謝料100万円をそれぞれ請求した。
<判決要旨>
被告丙が多数人の面前で、原告らを名指しして「お前がやったんだろう」等と言った行為は、憶測に基づき原告らの社会的評価を低下させ、その名誉を毀損した行為で、不法行為を構成することは明らかであるから、原告らそれぞれに慰謝料30万円が相当である。
また本件自宅待機命令は、憶測に基づき、原告らが犯罪に加捜していると疑い、証拠隠滅工作を防止する目的で発したものであり、業務命令権の濫用として違法というべきである。
組合では、本件転勤命令以前4年間福岡事務所から東京事務所に転勤した者がいないこと、本件転勤命令は、原告らが組合に対して内容証明郵便により名誉固複、職場復帰を求めた直後に出されていること、原告らだけに東京で研修を受けさせる必要性があるとの合理的な理由はないこと等に、原告らの証拠隠滅工作を防止するためになされたことを併せ考えると、原告らを福岡事務所から排除し、原告らの横領事件への関与を調査する目的の下にしたものと認定するのが相当である。
そうすると、本件業務命令は、業務愈令権の濫用として違法なものであり、遵法な本件業務命令を基礎にしてなされた原告らの出勤停止処分及び東京事務所への出所を愈じる各業務命令も違法というペきである。
会社は組合の業務執行者であるから原告らの損害を賠償すペきであり、慰謝料は原告らそれぞれに100万円をもって相当と認める。
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