採血ミスで事務に配転されて退職
日本赤十字社准看護婦配転抗議退職事件
(金沢地裁平成14年11月14日判決)
<事件の概要>
日本赤十字社(被告)に勤務し、採血業務に従事していた准看護婦(原告)の上司に関する中傷ビラ(怪文書)が出回り、その作成者が原告であるとの噂が流れた。
その後原告は半年間肺ガンで入院し、職場復帰して献血者の事前検査に従事したが、上司は、原告の手が遅く、円滑な処理を阻害しているとして本所採血課に異動させた(第1回異動)。
その後、顧客のNTTから担当者の言葉遣いについて抗議を受け、これが原告のこととして、部内会議で固有名詞を出さずに注意された。
その直後、原告は採血ミスにより、献血に来たAがしびれと痛みを訴え、2年以上通院を続けたことから、被告はAに弁明ができないと考え、原告を採血業務のない事務部に配置換えした(第2回異動)。
原告は、怪文書事件、第1回異動、NTT事件、第2回異動の処遇から、採血課は自分を必要としていないと考え退職届を提出したが、2度の不当な異動等により精神的苦痛を受けたとして、被告に対し、慰謝料500万円、逸失利益として1年分の給与を請求した。
<判決要旨>
第1回異動の「手が遅い」との理由は、抽象的である上、原告に弁明の機会も与えていないこと、原告の職場での人間関係の苦労を上司が知っていたことに鑑みると、不適切ということができる。
しかし、その理由に合理性がないとはいえないこと、異動後も同じ採血業務であること等に鑑みると、これを違法とまでは評価できない。
原告・被告間の労働契約は、職種を(准)看護婦業務に限定していたと認められるから、原告に事務部への配転を命ずることは、原告の合意があるれ業務上やむを得ない理由がある場合でなければ許されないが、原告は第2回異動の内示を受けて取り乱した状況であったこと等に鑑みると、その同意を得たとの確信を持てないまま発令したと推認できる。
被告がAの手前何らかのけじめが必要と考えたことには一応の合理性が諦められ、他方、第2回異動は原告の准看護婦の地位を失わせるものではないし、短期間で原告を採血課に戻すことを予定していたから、原告にさほど大きな負担をかけるものとはいい難い。
第2回異動について、所長らは本件針刺し事故について原告から事情聴取すらしていないから、懲戒処分的な意味合いを持つ人事異動を発令するには手続きが杜撰で違法との評価を免れず、被告はこれによって原告が被った損害を賠償する責任がある。
原告は、今までの針刺し事故と比較しても余りにも不均衡な措置を受け、怪文書事件では作成者との噂を流され、「辛が遅い」との理由で第1回異動をさせられ、NTT事件ではトラブルの章住着のように見られた上、更に弁明の機会もなく納得できない実質的な懲戒処分を受けたことが認められ、その精神的衝撃に対する慰謝料は60万円が相当である。
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