自分のHPで会社批判で配転と退職
新聞記者社内批判HP掲載事件
(第1審 東京地裁平成14年3月25日判決)
(控訴審 東京高裁平成14年9月24日判決)
<事件の概要>
被告の編集記者(原告)は、取材源秘匿など「悪しき慣行」を批判するとして、自らのHP上に、新聞記者の身分を明らかにして、業務上知り得た事実等を題材として被告を批判する文章を掲載した。
これを知った上司が、文中の取材源等に関する部分、記者の倫理や編集方針に反する部分について全面閉鎖を命じたところ、原告はHP公開に関する基準の作成を要請した上で一旦これに応じた。
しかし、1年経過しても同基準が作成されないことから、原告は再びHPを再開し、新たに取材相手の実名等を記載した取材・編集過程等を公表し、被告を言論の自由を認めない「悪魔」と批判する記事を掲載した。
被告は原告に依願退職を勧告したが、原告がこれに応じないため、14日間の出勤停止処分と資料部への配転を行ったところ、原告はその後出勤しなくなり配転半年後に退職し、懲戒処分の無効確認及び慰謝料1,000万円等の支払いを請求した。
第1審では、本件出勤停止処分を有効と認めたほか、本件配転に業務上の必要性が認められるとして、原告の請求を棄却した。
<控訴審判決要旨>
取材源や取材の過程を公表することにより、実際間畏として被控訴人(被告)の今後の円滑な取材活動が妨げられるなど、その業務に支障が出るおそれがある以上、その公表は被控訴人の判断に委ねられるべきである。
控訴人(原告)が−般論として被控訴人の悪しき慣行を批判することは許されるとしても、具体的な取材の過程や取材源を個人的に公表することが許されないことは明らかであって、そのことは控訴人も容易に認識できたというべきである。
そして、上司によるHPの全面的な公開禁止の指示が行き過ぎであったとしても、控訴人がこれを再開するに当たり、被控訴人の了解を得ないまま、これらを削除や修正を加えることなく再掲したばかりか、その後も取材の過程や取材源を公表する記述を含んだ新たな文章を公開したのであるから、会社の方針に故意に反したというほかない。
そればかりか、控訴人の「捏造記事」の文章は、自身の記事の一部に創作があったことを吐露したものであり、それ自体些細なものであっても、被控訴人の記事には創作部分が日常的にあるとの不信感を広く読者に与えかねないものであり、また「悪魔との契約」は、被控訴人を「悪魔」、「屍姦症的性格を帯びた邪悪な企業」と呼称するものであり、被控訴人のマスコミとしての信用を害し、就尭規則に反するものであるから、控訴人には懲戒事由があり、14日間の出勤停止処分が不相当とはいえない。
また本件配転命令は、控訴人を取材業務に就かせることは当面相当でないと判断されたことに基づくものであって、その判断には合理性があり、違法とは認められない。
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