長時間労働批判への糾弾を恐れ自殺
中央労基署長(国際運送会社従業員)自殺事件
(名古屋地裁平成21年5月28日判決)
<事件の概要>
国際運送を業とする会社に勤務する甲は、時差等により、深夜に連絡をとらざるを得ないことから、メールを自宅のPCに転送して、深夜や休日に自宅で対応するなどしていた。
甲は、インターネット掲示板に匿名で長時間労働の改善を訴える投稿をしたところ、人事部は所長に対し投稿者への厳重注意を指示し、所長は従業員に同掲示板にアクセスしないように注意するとともに、甲らによる書込みを職場で回覧させた。
甲とペアで仕事をしていた女性従業員の投稿に対し、「会社に批判的な発言をすると一生飼い殺しになるから発言は程々に」との返信があったことから、甲は自分の書込みが発覚して懲罰人事を受けるのではないかと恐れ、その後同僚が倒れたこともあり、次に倒れるのは自分だろうと組合幹部に訴えて自殺した。
甲の両親(原告)は、甲の自殺について労災保険法に基づく遺族補償給付を請求したが不支給処分を受けたため、同処分の取消しを求めた。
<判決要旨>
甲の自殺前2か月間の時間外労働は、月100時間を優に超え、同3〜6か月間はおおむね月80時間程度の時間外労働を行ってかJ,加えて,深夜や休日に海外からのメールに対応していたことにより、仕事から開放される時間が取れない状態が続いた。
また、甲の業務は難易度が高く、トラブルに備える必要があるなど精神的な緊張を強いられるものであり、甲の業務は質的にも過重なものであった。
さらに、本件発症直前の組織変更に関して、甲はネット掲示板への投稿を原因とする処分を危惧していたところ、多忙な中で実質減貞がなされて報復人事を疑い、その中で同僚が倒れる事態が起こって自分の健康にも不安を感じたことは、過重な労働と相倹って,業務上の出来事によるストレスが要因といえる。
以上によれば、甲が従事した業務は、平均的労働者を基準として、社会通念上、本件発症及び重症化の原因となりうる程度の疲労の蓄積やストレスをもたらす過重なものであったと認められ、他方、甲が他に業務よりも有力な発症原因となるような精神疾患に対する脆弱性等を有していたとは認められないから、業務と本件災害との間に相当因果関係があると推認すべきである。
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