労基署へ申告したため深夜勤務へ配転
運送会社女性従業員配転・懲戒解雇事件
(神戸地裁平成16年2月27日判決)
<事件の概要>
運送会社(被告)で事務管理業務に従事する女性従業員(原告)は、女性従業員の年齢給についての貸金規程の定めが男女差別であるとして労基署に申告し、同署は被告に対し、賃金規程の改定と貸金の遡及是正を勧告した。
その後、被告は原告を事務管理業務から外し、以前従事していた2トントラックの乗務に配転し、さらにその2年半後、原告を午後6時から午前3時までの深夜勤務を常態とする係に配転を命じた(本件配転命令)が、原告がこれを拒否したことから、原告を懲戒解雇処分とした。
これに対し原告は、本件配転命令は労働契約に違反すること、労基署への申告に対する制裁という不当な動機・目的でなされたものであることから無効であり、その拒否を理由とする本件懲戒解雇も無効であるとして、従業員の地位の確認と貸金の支払いを請求した。
原告が正社員に登用された平成9年1月当時、改正前の労働基準法は女性労働者の深夜勤務を原則として禁止していたから、労働契約の内容として、原告を深夜勤務に従事させないとの合意が成立していたと認めるのが相当である。
したがって、本件配転命令は、原告の同意がない以上その効力を有しない。
原告は被告の賃金規程が男女差別であるとして労基署に申告し、労基署が被告に是正勧告したこと、原告が申告したとの疑いを持たれて被告との間で軋轢が生じたこと、原告は年齢給の遡及是正に係る請求権の放棄を強く迫られてこれに応じたこと、その直後に被告は原告を事務管理業務から外したたこと、その頃から被告の役員や幹部社員が原告に厳しい態度をとるようになったこと、その後被告が原告に本件配転命令を発したことが認められる。
この事実に照らすと、被告は原告が労基署に申告して以降原告に厳しい態度で対応してきたことが認められ、喫煙についての原告の申入れに対する「そういう人は夜勤に行くか辞めてもらうしかない」旨の発言を勘案すると、本件配転命令は、労基暑に内部告発したり、権利主張をしたりする原告に制裁を課する動機・目的による人事と推認できる。
原告は、従前短期間夜勤に就いた際、健康を害する恐れを実感したことがあって本件配転命令を拒否したと諦められるから、本件配転命令は原告に対し社会通念上甘受すべき程度を著しく超える不利益を課するものといえ、無効である。
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