先輩等による長期間のいじめで自殺
医療法人准看護師自殺事件
(さいたま地裁平成16年9月24日判決)
<事件の概要>
被告法人が経営する病院に勤務する最年少の男性准看護師甲(昭和55年生)は、先輩准看護師である被告(昭和49年生)らから、風俗店への送迎、パチンコ屋の順番待ち、馬券の購入、女性の紹介、金銭の負担などをさせられたほか、デートの妨害などもされた。
職員旅行の際、被告は、甲と甲を好きな女性との性行為を撮影しようと企てたが、甲はこれを嫌がって焼酎を一気飲みし病院に運ばれた。
また、被告は甲に対し、「死ねよ」と言い、甲がミスをすると、罵倒したり、手を出したりし、甲はこれらを苦にして自殺した。
甲の両親である原告らは、甲の自殺は被告らのいじめが原因であるとして、被告及び被告法人に対し、それぞれ1,800万円の損害賠償を請求した。
被告は、自ら又は他の男性看護師を通じて、甲に対し侮辱、暴力等違法な行為を行ったと認められるから、不法行為に基づき、損害を賠償する責任がある。
被告法人は、甲に対し、職場の上司及び同僚からのいじめ行為を防止して甲の生命及び身体を危険から保護する安全配慮義務を負担していたと認められるところ、本件では被告らの甲に対するいじめは3年近くに及んでいることから、これを認識することは可能であったにもかかわらず、これを防止する措置を採らなかった安全配慮義務違反を認めることができる。
したがって、被告法人は、債務不履行によって、甲が被った損害を賠傭する責任がある。
被告らのいじめがしつように長期に及んでいること、甲は21歳の若さで自殺に追い込まれたこと、他方、いじめに対する対処方法は自殺が唯−の解決方法ではなく、自殺を選択したのは甲の内心的要因による意思的行動である面も否定できないこと、被告も自殺を予見していたとは認められないことなど諸般の事情を考慮すれば、甲が被った精神的苦痛に対する慰謝料は1,000万円をもって相当と認める。
被告法人は甲が自殺することについて予見可能性があったとまでは認め難く、本件いじめを防止できなかったことによる損害についての賠償責任はあるが、甲の死亡については賠償責任がなく、慰謝料は
500万円をもって相当と認める。
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