2度の産休取得で10年以上の仕事外し
私立高校女性教諭隔離等事件
(第1審 東京地裁平成4年6月11日判決)
(控訴審 東京高裁平成5年11月12日判決)
<事件の概要>
被告学校法人の経営する高校に勤務する女性教諭(原告)は2年余の間に2回、それぞれ約3か月の産前産後休業を取り、第2子の産休明けに出勤すると、校長から「腰の低さが欠けていた」などと言われ、ボーナスを受け取ること、子供の病気で休むことなどについて叱責やれた。
原告は産休取得等について執拗に始末書の提出を求められながらこれを拒否し続け、退職勧奨を拒否したことなどから、授業・担任等を外され、席を他の教諭から離され、さらに被告と組合とのトラブルを契機として別室に隔離された挙げ句、産休明け復帰から8年後に自宅研修を命じられ、計10年以上の間本来の仕事から外された。
原告は、これら一連の措置は不当労働行為に当たるとともに、業務命令権の範囲を逸脱する違法行為であるとして、被告に対し慰謝料1,000万円を請求した。
<第1審判決要旨>
原告に対し、長期間にわたって−切の仕事を与えず、しかも勤務時間中に一定の場所にいることを命ずることは、生徒の指導・教育という原告の中心的労務とは相容れないから、特段の事情がない限り違法というべきである。
被告が原告から−切の仕事を取り上げたのは、産休を権利として主張することを快く思わない校長が、恭順の意を表さない原告の態度を嫌悪した嫌がらせという他はないから、違法といわぎるを得ない。
被告が原告を他の教員から隔離したのは、組合結成を嫌悪した被告による原告に対する嫌がらせであるとともに、他の教員に対する見せしめであると推認でき、違法といわざるを得ない。
また自宅研修命令は、4年以上の隔離勤務によっても自発的に退職意思を示さない原告に対し追打ちをかけたものであり、不当労働行為と認めぎるを得ない。
被告による差別により原告は10年以上にわたって一切の仕事を取り上げられ、しかも1人だけの部屋で、1日中仕事もなく机の前に座っていることを強制され続けた挙げ句、自宅研修の名目で排除されたのであって、これによる甚大な精神的苦痛に対する慰謝料としては400万円が相当である。
本件は被告から控訴されたが、慰謝料が600万円に引き上げられた。
転職サイトを使いこなす!
スポンサードリンク
|
|