業務上と私的なストレスで自殺

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業務上と私的なストレスで自殺

さいたま労基署長(化学会社)自殺事件

(第1審 さいたま地裁平成18年11月29日判決)

(控訴審 東京高裁平成19年10月11日判決)

<事件の概要>

医療品等についての研究、生産、販売等を業とする会社に勤務する品質管理者である甲は、トラブルの対応において適切な対応ができず、同僚に処理を頼まざるを得ない事態に陥ったことが何回かあり、部下らから厳しく批判されたほか、専門知識の不足等により原料規格書の作成が思うように進まなかった。

原告の月間平均時間外労働時間は、概ね10ないし20時間で、他の従業貞より少ない状況であった。

一方、甲は長年私的に株耶ほ行っていたところ、3か月で800万円もの損失を出し、その損失から約8か月後、自ら設定した規格書の期限日に自殺した。

甲の妻である原告は、甲は業務が原因でうつ病に雁思し、その結果自殺に至ったとして、労基署長(被告)に対し労災保険法に基づく遺族補償給付等を請求したが、被告が不支給処分(本件処分)としたことから、本件処分の取消しを求めた。

<第1審判決要旨>

「社会通念上、当該精神疾患を発症若=は増悪させる一定程度以土の危険性」の判断に当たっては、通常の勤務が期待されている平均的な労働者を基準とすることが相当であるが、通常の勤務こ就くことが期待されている者とは、完全な健常者のみならず、一定の素因や脆弱性を抱えながらも勤務の軽減を要せず通常の勤務に就き得る者、いわば平均的な労働者が最下限の者を含むと解するのが相当である。

周囲は原告を課長に次ぞ筆頭係長として、また品質管理者として、それなりの能力と責任を期待していたところ、甲は現場のトラブルの際に適切な対応ができず、周囲や部下から文句が出され、馬鹿にされることが一度ならずあり、それらの−つ−つの出来事自体は強度でないとしても、甲の自責、自信喪失につながり、徐々にではあるが継続的に心理的負荷を募らせる状況に置かれていったことがうかがわれる。

甲の時間外労働は、死亡前6か月の時期でも、1か月平均10時間から20時間ないしこれを多少超える程度であり、所定休日が土日・祝日であることを併せ考慮すると、甲の時間外労働時間は長時間と評価できるほどのものではなく、社会通念上特に強度の心理的負荷を与える程度に至っていたとは認められない。

13次薬局方改正に伴う原料規格書の改訂作業は、薬剤師の資格を持ち実務に精通している課長の目から見れば大した業務量とは認められないかもしれないが、専門知識を持たず、ワープロ技術の習熟していない甲にとっては、それなりの労力と時間を要するものであったた認められ、このような中で規格書改訂作業が思うように進まず、自ら設定した期限が目前に迫っても終了の終了の見込みがつかなかったことで、不安感、焦燥感さらに自責の念が強くなったことは十分に理解可能であるから、本業務はこの頃甲に対し強い心理的負荷を与えたものと認められる。

甲は、株取引において3か月間に約800円の損失を被ったことで、相当の心理的負荷を受けたと推認される。

しかしながら、甲は1000万円の相続財産を株取引の元手にしたと考えられ、原告も甲と同等以上の収入を得ていたこと、長男も就職し、長女転結婚の予定があったこと、甲の株取引の失敗によって家族の生活に変化があったとの証拠はなく、株の損失と甲のうつ病発症・自殺まで半年以上の期間が経過していること等を勘案すると、株取引の失敗が本件うつ病の発症ないし増悪の決定的な原因となったとまでは考え難い。

そうすると、甲のうつ病発症及び憎悪は、業務によるストレスが一因となっていると認められるところ、業務による心理的負荷は、甲に対し社会的通念上うつ病の発症や増悪の点で一定程度以上のの危険性を有するものであったというペきであり、業務と甲のうつ病の発症及び増悪との間には相当因果関係を認めるのが相当である。

<控訴審判決要旨>

トラブル対応についての不適応は、甲の業務遂行能力の低下によるものと解され、これは甲の脆弱性・反応性の強さを示す事情ということができる。

また、現場のトラブル処理への対応は、品質管理係の日常業務の一環であり、工場管理のトラブルの処理は平均して3、4日に1回程度に止まるから、一般的に強度の心理的負荷を伴う業務とはいえない。

規格書改訂作業は、専門知識も必要とされず、それほど長時間を要するものでもなく、甲の従前の能力を前提にすれば特に難しい作業であったということはできないから、一般的に強度の心理的負荷を伴う義務であるとはいえない。

一方、甲は3か月間に株取引で3回にわたって合計約800万円の損失を受けたところ、当時の甲の年収は790万円であったから、その損失額は極めて大きいということができる。

また、甲の死亡当時の預金残高は約24万円、債務が約369万円であり、800万円もの損失は甲に経済的に甚大な被害を与えたということができる。

甲は株取引の損失直後にうつ病の前駆症状といわれる睡眠障害が生じ、甲が株取引の損失を家族や同僚に打ち明けていないこと、株取引で449万円という最高額の損失を受けた直後睡眠障害が生じ、その約5か月後にうつ病を発症しているとみられることを考慮すると、株取引の失敗が甲に極めて多くの心理的負荷を与えたものと考えられる。

以上によれば、甲の業務が−般的に強度の心理的負荷を伴うものであったということはできない一方、株取引で被った大きな損失が甲に極めて多くの心理的負荷を与え、本件うつ病発症の決定的な原因となったものとみるべきであって、本件うつ病の発症・自殺には業務起因性が認められず、本件不支給決定は適法である。


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