理事長の不正経理を公表して解雇
群馬(私立学園)名誉毀損事件
(第1審 前橋地裁平成12年1月13日判決)
(控訴審 東京高裁平成12年8月7日判決)
<事件の概要>
原告甲は、高校、短大を経営する原告学校法人(学園)の理事長、被告Aはその専任講師、同Bは事務長である。
被告らは、@後に自宅待機処分の原因となる「文書1」を原告甲らに突きつけて即刻辞任を要求し、A「文書1」をそのまま世間に公表し、世間の判断を仰ぐ旨記載された「文書2」を突きつけた。
そして被告らは、原告甲ら理事が辞任しない場合は、「文書2」に記載された不正経理等をマスコミに公表するなどと迫った。
学園は被告らに自宅待機を命じたところ、被告らはその無効確認等請求を提訴し、その訴状には、学園において期末手当不支給等が発生し、その原因の一つとして原告甲をめぐる不正経理があると言及されていた。
被告らは記者会見で訴状の内容を説明し、各紙に学園の不正経理をめぐる記事が掲載されたことから、学園は被告らを普通解雇処分とした。
原告らは、被告らが原告甲にあたかも不正経理があるかのように喧伝して学園の名誉を毀損したとして、連帯して慰謝料1,000万円を支払うよう請求した。
<第1審判決要旨>
被告らの行為は、学園に勤務する職員として、理事長らについての評価、意見の陳述の域をはるかに超えたものであって、学園の秩序を乱し、もしくはこれを危うくしたものであり、違法性を帯びたものというべきである。
従って、被告らの行為は原告らに対する共同不法行為と認められ、慰謝料はそれぞれ100万円が相当と認められる。
被控訴人兼控訴人(第1審被告)らの危慣には首肯できるところがあり、殊更に脅迫・強要にわたる言動があったとまですることには疑問がある。
被告らが、要求を受け入れられない場合にはマスコミ等に公表する旨の発言をしたことについては、実際にマスコミに公表したのは、約4か月後の、しかも自宅待機処分の無効確認訴訟を提起した段階に至ってからであることからして、この事実には疑問がある。
被告らが労働組合役員に対して控訴人兼被控訴人(原告)らによる不正行為を説明したことについては、内部関係者に対するものであり、しかも不正経理の内容等についてどの程度まで具体的に説明したのか不明であることなどからすれば、直ちに名誉毀損の不法行為を構成するとまでいうことは困難である。
13年前のK館の改修工事は不自然であり、会計事務処理について多くの不審な点があり、これが原告甲の用途に充てる資金を捻出するために行われた架空の工事であることを疑わせる多くの資料が認められる。
そうすると、被告らによるこの事実の公表は、公共の利害に関する事実について、学園の運営の適正化という公益目的から行われたものと考えられるから、不法行為を構成するものではない。
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