賃金の非常時払いと前払い
労働基準法では労働者が出産、疾病、災害、その他、厚生労働省の定める非常の場合に賃金を請求した場合には、支払期日前であっても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならないとしています。
<厚生労働省の定める非常の場合>
@労働者の収入によって生計を維持する者が、出産、疾病または災害に遭遇した場合
A労働者またはその収入によって生計を維持する者が結婚し、または死亡した場合
B労働者またはその収入によって生計を維持する者がやむを得ない事由により、1週間以上にわたって帰郷する場合 |
支給しなければならないのは賃金は既往の賃金(すでに働いた分の賃金)ですから、まだ働いていない賃金まで支払う必要はありません。
疾病や災害は会社とは関係のない私傷病であっても支払わなければなりません。
非常時払いは、労働者本人だけに限らず、労働者の収入で生活をしている家族にも当てはまります。
例えば、労働者が結婚する場合はもちろん、その扶養する娘が結婚する場合であっても該当します。
この賃金の非常時払いは、賞与についても適用され、賞与額算定期間が終了し、金額が確定していれば支払わなければなりません。
賃金の前払いを申し込まれても、会社には応じる義務はありませんが、恩恵的に前払いに応じることはできます。
会社から借金をしている場合は、支給される月々の給与から天引して返済に充てるのが簡単ですが、これは賃金の全額払いの原則に違反して禁止されています。
給与を全額支給してから、あらためて前借金を返してもらうようにしなければなりません。
判例では、「労働者が自由な意思に基づいて相殺に同意したという合理的で客観的な理由」があれば、相殺は可能とされています。
ただし、この「合理的で客観的な理由」は厳しく判断されますので、簡単に給与からの天引はできません。
会社は、貸付をする際には金銭賃貸借の書面を作成するなど、相殺についても個別同意の合意文書を作成しておくことが大切です。
例えば、退職した社員が会社に借金を残している場合、退職金との相殺が考えられますが、原則として、退職金との相殺はできないのです。
いったんは退職金は支払わなければならず、その後、支払に応じなければ訴訟などの手段で取り返すしかありません。
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