労働者派遣と労働者供給の違い
派遣法によって新たに制度化された労働者派遣事業だが、その制定にはいくつかの問題がありました。
まず労働者派遣事業の実態は、派遣先にとっては、労働者の間接雇用であり、派遣元にとっては、本質的には労働者を他の事業者に供給することで成り立つ労働者供給業に代わるものではないかということです。
第2次世界大戦前、わが国に労働法が十分に整備されていないときに、労働者が就労するに当たって、それを食い物にする悪辣な業者が多くありました。
仕事にありつけない失業者に就職をあっせんする代わりに賃金の一部を「中間搾取」(ピンハネ)する例も横行していました。
工場法(労働基準法の前身)が普及し、大正12(1923)年に最低の労働条件が法制化されたり、大正11年には、健康保険法が制定されるようになると、事業者は、法の適用や事業者の負担を嫌い、労働者供給業者から労働者を受け入れる間接雇用の形態が広がりました。
間接雇用の仲立ち者は、通常「人夫供給業」や「組請負」業者といわれていました。
戦後、職安法や労基法が相次いで制定され、雇用情勢の民主化と間接雇用の禁止・直接雇用の導入が進められ、労働者供給業は原則禁止となりました。
派遣法は労働者派遣を合法化するために、その2条において、@労働者供給、A業務請負、(参出向という労働者派遣と類似の業務をそれぞれに区別する手法で労働者派遣の定義付けをしました。
また、職安法4条では、派遣法2条一号に規定する労働者派遣に該当するものを労働者供給事業に該当しないと規定しています。
さらに、同法44条は労働者供給事業を原則禁止し、例外的に厚生労働大臣の許可を得た労働組合等だけに労働者供給事業を認めています。
許可を得た労働組合は無料で労働者供給事業を行うことができます。
「無料の供給」とは、供給するに当たって、手数料やマージンなどを一切取らないことです。
労働組合にだけ無料の労働者供給事業が認められた理由は、労働組合が自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位向上を図ることを主目的として組織する団体であることによります。
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