派遣先で派遣労働者を懲戒
派遣中の労働者が、頻繁に無断欠勤や遅刻をしたり、作業中に無駄話ばかりしていて手を休める時間が多いとか、私用でメール交信をするなど執務態度不良であるとき、指揮命令を行使する立場にある派遣先は業務に支障をきたすとして、労働者にそれなりの注意を与え、その行為を戒め、反省を促すのは当然です。
一般的に企業にあっては、常習的な無断欠勤や遅刻をする労働者には、不良勤怠行為として就業規則の定めをもって懲戒処分とします。
懲戒とは戒めることで、特別の監督関係ないし身分関係にある者に対して一定の義務違反を理由として科する制裁です。
企業においては通常、懲罰的な意味を持った職務上の処分を指します。
しかし、労働者派遣においては、上記のような労働者の責めに帰すべき不法行為あるいは欠勤や遅刻行為に対して、派遣先では自社の就業規則上に定めがあったとしても派遣労働者とは雇用関係がないため、懲戒権がなくそれを適用することはできません。
派遣労働者の懲戒処分は、派遣元の就業規則に従い、派遣元の責務において行われます。
したがって、派遣先は派遣元に当該労働者の行動を伝え、労働者の交代を要請するか、派遣契約の解消を要請することになります。
場合によっては損害賠償の請求もあり得ます。
派遣元では派遣先からのクレームを受けて事実関係を調査し、それに応じた処分をするが、懲戒処分相当と思われる場合は、派遣元の就業規則の定めにより行わなければなりません。
これによる懲罰の度合いが派遣先と異なるケースは多々考えられ、派遣先が求める懲戒処分よりも甘い処分に終わることもあり得ます。
懲戒処分に至るようなケースでなくとも、たとえば派遣労働者の労働能力不足などで派遣先での作業に支障を生じたりすれば、派遣先としては派遣元にクレームを寄せることになります。
派遣元としては、就業規則の内容を派遣先と派遣労働者に十分知らせておくのと併行して、可能な限り派遣労働者の教育訓練・能力開発を行うとともに、関連法令等の周知のための説明会開催などの機会を確保するよう努めることが必要です。
就業規則は、労基法89条の規定により、常時使用する労働者が10人以上の使用者に作成義務があり、労働者が就業するに当たり遵守すべき事業場の規律および労働条件を定めたもので、事業場における労働者はこれにより拘束されます。
就業規則には法的規範性が認められており、労働者は就業規則の存在および内容を現実に知っている、いないにかかわらずその適用を受けます。
労働者を表彰・制裁するには、就業規則にその種別および事由を定めて周知しておく必要があります。
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