派遣労働者の不法行為
違法行為とは法律・命令に背き正当性を持たない行為をいい、不法行為とは、故意または過失によって他人の権利を侵し損害を与える行為をいいます(民法709条)。
派遣労働者は、派遣先の監督下にあり、指揮命令権を持つ者が注意監督することによりその違法行為を予防し得ます。
また、現実に派遣元は派遣労働者の動向を確認することは容易ではないため、派遣労働者の不法行為によって生じた損害賠償は当該労働者に対して請求するべきであり、派遣元までは及ばないのです。
しかしながら、裁判においてパソナ事件(平成8.6.24東京地裁)では派遣元の使用者責任を問い、派遣元にも損害賠償の支払いを命じました。
このため、この判決は例外的な判決といわれています。
この事件は、派遣会社であるパソナが派遣した労働者が派遣先の会社の金員を横領したものです。
この事件で派遣労働者は、派遣先において、社会保険手続きの業務に就いており、その業務の一環として各種給付金の受入れ、支払事務を担当していました。
派遣終了後、派遣先の社員から各種給付金が支給されないという苦情が出て、調査の結果、派遣労働者が虚偽の内訳書を作成していて横領が発覚しました。
この事件の裁判では、派遣元は派遣担当者を定期的に派遣先に訪問させて派遣労働者を監督していたとして反論したが、当該派遣労働者の雇用に際して住民票の提出も受けないで派遣していたことなどを根拠に、判決は、「派遣元は、派遣労働者の選任およびその職務執行の監督について相当の注意を尽しているとは到底言えない」として、派遣元の使用者責任を求めました。
上記の判決は例外的ともいえますが、通常は派遣元の賠償責任は否定され、派遣先において損害を被ることになります。
派遣先においてこのようなリスクを回避するためには、派遣元と派遣契約を結ぶ際に、派遣労働者の違法行為によって損害を受けた場合は、派遣元にも使用者責任(その範囲・負担割合・条件等)が及ぶ旨明記すべきです。
また金銭を取り扱う業務等に派遣労働者を充てるような場合は、まずは労働者派遣契約の時点でそのことを労働者にも派遣元にも明確にして責任感を植え付けておく必要があります。
さらに、取り扱う業務を勘案し、派遣先は派遣労働者と雇用関係にないため派遣労働者に直接身元保証人を求めることはできないから、派遣先は連帯保証人の差し入れを派遣元に求める方法なども検討すべきです。
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