黙示の労働契約成立の判例
<判例>
Aは、平成4年3月にB経営のC病院に履歴書を提出してC病院の事務職員Dの面接を受け、Dから報告を受けた後、E紹介所に雇用され同紹介所から付添婦として、C病院に派遣された。
Aの採用に際し、E紹介所は関与していない。
また、Aは、C病院で付添婦として勤務するについて、担当する患者をC病院から指定され、出退勤をC病院の設置したタイムカードによって病院職員から管理され、昼勤、夜勤の勤務する日を患者やE紹介所の指定によらずC病院の勤務表によって指定され、付添業務そのものをC病院から指揮、命令されており、朝礼への参加、病院の清掃、夜警をBから命じられ、C病院から病院職員としての監督を受けており、さらに担当の患者が死亡した場合に付添料2日分を控除され、付添料を患者の病院に支払った額ではなく、C病院の定める月額20万円で支給され、C病院から給料の支払を受けていた。
AはE紹介所から解雇されたところ、C病院との間で労働契約上の地位の確認を求めて提訴し、一審は、労働契約関係の成立を否定したため、Aが控訴したのが本件である。
「使用者と労働者との間に個別的な労働契約が存在するというためには、両者の意思の合致が必要であると解する以上、明示された契約の形式のみによることなく、当該労務供給形態の具体的実態を把握して、両者間に事実上の使用従属関係があるかどうか、この使用従属関係から両者間に客観的に推認される黙示の意思の合致があるかどうかにより決まると解するのが相当である」。
「Aは、E紹介所に雇用され同紹介所からC病院に派遣された付添婦という形式がとられているものの、あくまでも形式だけのものであり、しかもE紹介所のオーナーであるFが人的構成や出資面でC病院から支配されているという関係にあり、結局のところC病院にを経営するBの指揮、命令及び監督のもとにBに対して付添婦としての労務を提供し、C病院がこれを受領していたものと評価することができるから、C病院を経営するBとの間に実質的な使用従属関係が存在していたものということができ、また、客観的に推認されるAとBの意思は、労働契約の締結と承諾をしていたものと解するのが相当であって、結局両者の間には黙示の労働契約の成立が認められるというべきである」。
(安田病院事件 大阪高判平成10・2・18 労判744 最三小判平成10・9・8 労判745)
転職サイトを使いこなす!
スポンサードリンク
|
|