宿直中の殺害の使用者責任の判例
<判例>
昭和53年8月13日、Y会社の従業員であった亡Aは、夜間の宿直勤務中、窃盗目的で社屋内に入り込んだYの元従業員に殺害された。
亡Aの父母であるXらは、Yに対し、安全配慮義務の不履行によって生じた損害(逸失利益、慰藉料等)の賠償を求める訴えを提起した。
第一審・控訴審がXの請求を一部認容したため、Yが上告した。
「雇用契約は、労働者の労務提供と使用者の報酬支払をその基本内容とする双務有償契約であるが、通常の場合、労働者は、使用者の指定した場所に配置され、使用者の供給する設備、器具等を用いて労務の提供を行なうものであるから、使用者は、右の報酬支払義務にとどまらず、労働者が労務提供のために設置する場所、設備もしくは器具等を使用しまたは使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務(以下「安全配慮義務」という。)を負っているものと解するのが相当である。
安全配慮義務の具体的内容は、労働者の職種、労務内容、労務提供場所等安全配慮義務が問題となる当該具体的状況等によって異なる」が、本件の場合、Yは、宿直勤務の場所に盗賊等が容易に進入できないような物的設備や、盗賊が進入した場合に危害を免れることができるような物的施設を設けるとともに、物的施設等の整備が困難である場合には宿直員の増員や安全教育などによって対応し、もって右物的施設等と相まって「Aの生命、身体等に危険が及ばないように配慮する義務があった」。
本件の事故はYの安全配慮義務の不履行によって発生したものであり、Yは被害を被った者に対し損害を賠償すべき義務がある。
(川義事件 最三小判昭和59・4・10 民集38巻6号)
転職サイトを使いこなす!
スポンサードリンク
|
|